赤い糸

 沢富は、今後の予定を確認した。「お母さん、23日は遊んで行かれるんでしょ」母親は、小さく顔を振った。「そうもいかないのよ。法務大臣の奥さんといろいろと話があってね。明日の午前11時の便で帰る予定。ひろ子さん、とんぼ返りでごめんなさいいね。時間が取れたら、対馬にも行ってみたいわ。その時は、よろしくね」ひろ子は、対馬に来てくれるとわかり、何か、うれしくなった。「ぜひ、お越しください。観光名所はいくつかありますから、喜んでご案内いたします。大したおもてなしはできませんが、対馬の活き魚料理を召し上がってください」母親に認められたような気分になり、何かしてあげられることはないかと考えた。

 

 ひろ子は、母親と少しでも一緒の時間を過ごそうと思い、明日、ヒルトンホテルに迎えに行くことにした。「お母さま、明日、お迎えに参ります。何時がよろしいですか?」さすが、タクシーの運転手だけあって、気が利くと思った。「それじゃ、9時にお願いします。空港でショッピングでもして時間をつぶすわ」笑顔でうなずいたひろ子は、即座に返事した。「はい、9時ですね。かしこまりました。出発まで、私も、お付き合いさせていただきます」三人は、エルミタージュを出ると風光明媚な鏡山(かがみやま)に向かった。

 

 


春日信彦
作家:春日信彦
赤い糸
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