狂人たち

 早速、安田は、今夜にでも話してみることにした。マジな顔つきの安田は、返事した。「わかった。今夜にでも話してみる。俺も日本のために死にたい。三島と同じだ。裏切られて、犬死するかもしれない。だからといって、何もせずに死にたくない。とにかく戦って、死にたい。こんな気持ちをリノはわかってくれないかもしれないが、とにかくじっくり話してみることにする」三島は、笑顔を作り、返事した。「先輩。その心意気です。きっと、リノさんはわかってくれると思います。リノさんもヤマト民族です。日本のために死にたいといえば、きっとわかってくれるはずです。朗報を待っています」安田は、大きくうなずいた。そして、今夜の作戦を考え始めた。

 

 安田は、さしはら旅館の間借り部屋に戻るとダルマを思い浮かべ壁に向かって座禅を組んだ。目を閉じた安田は、リノの攻略方法を考え始めた。リノの機嫌をとる方法はないか?意識を集中していると暗闇の中からリノのよがり声が響いてきた。「よし、これだ」と叫び安田は、両手で両ひざをポンとたたいた。二人は先月まで毎日セックスをしていたが、やせ始めた安田に不安を感じたのか、8月からは、月水金をセックスの日と決めた。カレンダーにチラッと目をやった安田は、ベッドで何気なくさしはら旅館の将来について話すことにした。指と舌でリノの怒りを抑える作戦を立てた。

 

 水曜日は、11時にリノの寝室に行くことになっていた。その時間にはベッドでリノが横になり安田を待っていた。そっとドアを開けた安田は、薄暗い部屋を忍び足で歩きすっとリノの右横に忍び込んだ。いつもならば、すぐに乳首を吸い始めるのだったが、今日は小さな声で話しかけた。「リノ、ちょっと話があるんだ。聞いてくれるか?」目を閉じていたリノは、目をパチッと開き顔をゆがめたが、小さくうなずいた。「何よ。今頃。手短に話してよ。も~~ハルちゃんたら~」安田の右手は、リノの左乳房をゆっくりもんでいた。「話というのは、旅館の将来のことなんだ」旅館と聞いたリノは、顔を右に傾け安田を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 リノは、問い返した。「旅館の将来って?」安田は、乳首をやさしくつまみながら話し始めた。「さしはら旅館は、繁盛してるみたいだし、リノと結婚したら、全力でリノを助けようと思うんだ。でも、日本はますます貧困化してるんだ。ここ数年、労働者の収入は低下する一方で、そのためか、朝食も食べられない子供たちが増加している。また、借金に依存する家庭が増加し、レジャーどころではなくなっている。今のままでは、レジャー産業は衰退し、温泉産業も下火になるんじゃないかと」リノは、乳首の快感を楽しんでいたが、真剣に耳を傾けていた。

 

 リノは、うなずき話し始めた。「そうよね、貧困は、日本が直面している最大の問題よ。レジャー産業は、生活が豊かでないとダメよ。家族で温泉につかり、楽しい時間を過ごすには、家計にゆとりが必要だし、休暇もないとね。ハルちゃんが言う通り。これから、日本はどうなるんだろ。でも、ハルちゃんがいるから、さしはら旅館は、きっと苦難を乗り切れる。ね、ハルちゃん」安田は、右手で乳房をもみながら、ニョキっと勃起した左の乳首を舌先で転がしていた。顔を持ち上げた安田は、話を続けた。「俺は、若旦那に向いているかな~。リノの足手まといじゃないか?ガンバっては、いるんだが」

 

 弱気な発言にリノは発破をかけた。「何言ってるのよ。ハルちゃんだったら大丈夫。二人で、ガンバ」リノは、話より舌先のテクニックを求めるかのように、69の態勢をとると真っ赤に膨れ上がったクリを安田の口に押し当てた。安田はベンチャー企業の件をどのように切り出せばいいか考えていたが、もうしばらくリノに快感を与えてからベンチャー企業の件を切り出すことにした。安田は、目の前の親指ほどに膨張したクリをチュ~~と吸い上げた。「ア~~~いい、いい」リノのよがり声が響くと、真っ赤にボッキしたクリを舌先で転がしては、滴り落ちるラブジュースをチューチューとのどに流し込んだ。いつもクリで二回はイッた。

 


 まずは、クリで二回いかせてから、ベンチャー企業の件を話すことにした。ワレメから飛び出したクリをチューチューと吸い上げては、舌先でこすり上げるとリノの腰は何度もピクピクと振るえ「ア~~イク~~」と叫び二度イッた。ぐったりしたリノは、ハーハーと息を吐き勃起したペニスを握りしめた。安田は、リノをそった抱きしめ、話し始めた。「俺さ、ベンチャー企業に誘われたんだ。若旦那をやりながら、ベンチャー企業やってもいいかな~」脱力したリノには、安田の言葉が耳に入っていないようだった。いつも、イッた後は、頭が真っ白になっていた。そして、しばらくすると騎乗位でセックスをするのだった。

 

 もう一度話しかけた。「おれさ~~、ヤコブに誘われたんだ。一緒にやらないかって、ベンチャー企業。俺は、やりたいと思うんだ。リノ、どう思う?」リノのぼんやりした意識にヤコブという外人の名前が突き刺さった。リノはつぶやいた。「ヤコブ?いったい誰?」リノは、身を起こしベッドに正座した。びっくりした安田も身を起こしあぐらをかいた。リノは、もう一度問い返した。「そのヤコブって誰?ナニ人?」気まずそうな表情を作った安田は、即座に返事した。「ヤコブというのは、イスラエルの留学生。ほら、ゆう子の彼氏、イサクの親友さ」リノは、首をかしげて質問した。「留学生ってのは、わかったけど、ベンチャー企業ってのは、どういうこと?どんな仕事?」リノは、仕事のことになると豹変した。

 

 安田は、一呼吸おいてゆっくり話し始めた。「今、AI、つまり人工知能だけど、AIロボット産業が急速に発展しているんだ。ヤコブたちは、日本にAIロボット開発を目的としたベンチャー企業設立の準備をやっているんだ。また、このプロジェクトのために、日本人の優秀なスタッフを集めているんだ。そこで、俺と三島がスカウトされたってわけだ。俺は、日本の景気回復ためになると思うし、さらに、日本のレジャー産業の復興にもつながると思うんだ。そうなれば、温泉産業も景気が良くなると思う。どうだろう、リノ?」リノは、苦虫をつぶしたような顔で返事した。

 

 


 「まあ、話としては、いいだろうけど、ハルちゃんがやるのはね~~。企業設立となれば、大変な仕事じゃない。若旦那をやりながら、片手間にやれることじゃないと思うよ。きっと、もし、ベンチャー企業に打ち込むのであれば、若旦那は無理ね。二兎追うものは、一兎も得ず、っていうでしょ。本当に、ベンチャー企業をやりたいの?」安田は、返事に詰まった。本心は、若旦那よりベンチャー企業をやりたかったが、笑顔で本心を打ち明けるのは、リノの機嫌を損ねるようで怖かった。「いや、まあ、何というか、チャレンジというか、日本のためというか、誰かがやらないといけないような気がして、まあ、やってみたいな~~と思って」

 

 リノは、回りくどい言い方から、本心を見抜いた。「ようは、やりたいってことね。まあ、ハルちゃんが若旦那をやらなかったからといって、旅館がつぶれるわけじゃないし、リノは、ハルちゃんの気持ちを尊重してあげたい。でも、糸の切れた凧になってしまうようで不安なの。おそらく若旦那をやるより、はるかに激務だと思う。数日間の出張とか、いや、イスラエルに滞在するとか、きっと、そういうことってあると思う。そうなれば、リノは、一人ボッチ。ハルちゃんも私を忘れて、浮気するんじゃない?ハルちゃんには、いつもそばにいてほしいのよ。わがままなようだけど。さみしいのはイヤ」

 

 安田は、そこまでリノの気持ちを考えていなかった。確かに、結婚して早々、国内だけでなく海外への出張も想像できた。また、単身赴任ということも考えられた。そうなれば、夫婦仲も冷めてしまい、離婚ってことにもなりかねない。自分の安易な考えに気づかされた。もう一度リノの気持ちを確かめて、決断をすることにした。「そうだよな。結婚して早々、単身赴任ってことも考えられる。新婚生活もできないことになってしまう。俺は、浅はかだった。若旦那という大切な仕事があるっていうのに。バカだった」リノは、肩を落としさみしそうな表情でつぶやいた。「でも、誰かが戦わないと、日本は沈没する」

 

 

 


春日信彦
作家:春日信彦
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