指輪と地獄

黄色い指輪

それは、黄色い指輪でした。その指輪を見たとき、私は故郷の、Uさん夫妻が住む、すぐ近くの実家に置いてきた青い指輪につながるものを感じました。私はその時、これだ、と思ったのです。これを買って、一生大事にすれば、あの憎い二人に心で勝てるのではないかと。

 

夕焼けがきれいな、父との思い出の故郷を思い出して、私は涙があふれました。しかし、そのとき、父の声がしました。「あんなやつらに勝ってどうするつもりだ?お前の宝物は、あの夫妻に勝つ指輪ではないだろう。病気のお前を差別して地獄に落ちていく人に勝つ指輪なんて、それこそお前の地獄への扉になってしまうよ。大事なのは、あの夫婦の子供がくれた、バラバラになったパワーストーンではないのか?」

集める

私は、その指輪を買わず、家に帰りました。そうか、一つ宝物があることより、素晴らしいことがある、それは、たとえ今は私を憎まされていても、あの子供が、私の病気をわかってくれていたこと、純粋な気持ちを私に持っていてくれて、その力で私が助かったことだ。あの、バラバラになったパワーストーンこそが、私の心の宝物だった。大事なのは一つや二つ大事にして、念を込めて力をつくることではなく、今まで私を支えてくれた、全ての物や人々に感謝することだ。

私は、バラバラになって、自傷した私を守ってくれた、あの、今はないパワーストーンをかき集めるようにして、今まで集めてきた小さなアクセサリーを集めてカバンに入れました。すると、私の命が傷つく前に戻り、真っ直ぐに天へ向かっていくのを物たちが手伝ってくれている気がしました。

Uさん夫妻は、きっと神の裁きを受けるでしょう。だから、私はもう憎まない。悪い人を憎むのは間違いです。悪い人は確かに人をズタズタにして死へと追いつめます。しかし、死ななくて助かったのなら、もうそれで勝っているのです。めちゃくちゃにされても、真っ直ぐに生きていく力を、いつか、天はわからせてくれるから。それは、物の力を借りてかもしれませんし、人の助けでもあるかもしれません。とにかく、死なないことが、もう人生に勝っているということなのです。

karinomaki
指輪と地獄
0
  • 0円
  • ダウンロード

3 / 4

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント