大切なのですよ。なぜなら、絹はほこりがつくと光沢が失われるからです。これが恐ろしいので、ほこりをつけたくないのです。そのうち、きもの用のブラシを買おうかと考えているほどです。
あと、書くまでもないでしょうが、絹は直射日光を嫌います。くれぐれも直接お日様のささないお部屋でつるしてください。
帯のシワは、叩いてもとれないものなら、翌日、当て布をして低温のアイロンをかけます。もっとも、私は今まで数えるくらいしかしたことがないですが。
ともかく、きものを着た翌日は、我が家の和室はすごいオモムキになっております。天井から帯がだらーーーーんとぶらさがり、二カ所にきものと長襦袢がぶら下がり、書き忘れましたが、伊達締めもぶら下がっています。伊達締めはきものよりも明らかに湿気を吸ってますから、これもつるして湿気を飛ばさないと駄目でございます。主人が部屋を見た途端に、
「すげえ光景、横溝正史の映画かと思った」などという意味不明のことを申しましたが、なんとなく、言わんとしていることは分かります。若い方にはお分かりにならないかもしれませんが、ご興味がおありなら、横溝先生の「獄門島」や「八つ墓村」などをお読みになると、何かを感じていただけるかと思います。ひと言で言えば、「すごく昔の日本っぽい感じ」とでもいいましょうかね。閑話休題。
それよりも、お手入れの話でございます。
きものの汚れよりも、長襦袢の汚れのほうが、憎い敵かもしれない、と思うことがあります。と申しますのは、きものと言うのは案外汚れがつかないのです。わたくしの場合、きものを着るのは月に4回程度ですが(梅雨のときなどは着ません)汚れて困った経験はありません。ラッキーなことだと感謝しています。
それに対して、長襦袢は6回くらい着ますと袖口が薄汚れてくるのです。袖口の他には、裾です。裾はともかく、袖口は目立つところですので、わたくしはさっそくクリーニングに出しましたのですが、言われたお値段は「8200円」でした。
…これではたまらない、と思い、長襦袢をもう1枚つくって3枚をローテーションし、後に、二部式襦袢も2枚買いまして、これでやっと満足のゆく体制になった、はずなのですが……
その「二部式襦袢」の襟の台が、洗濯を重ねるうちに、糸がほつれてきたのには苦笑させられました。まあ、こういうのは自分で縫うしかないので、補修いたしました。でも、今度二部式の襦袢を買うときは「中国製」は買いません(笑)。
ともあれ、長襦袢は、最低2枚、できれば3枚をローテーションさせるのをお勧めいたします。袖口から汚れが見えるようでは、きもの姿の美しさは半減します。
どうしても長襦袢の袖の汚れをお家で落としたい方のために、ベンジンで汚れを落とす方法も書いておきましょう。
①ガーゼまたはふきんに、たっぷりとベンジンをつけて、長襦袢の袖の汚れを叩くようにする。②そのあと、乾いた布を当てて、汚れをその布に移す。ベンジンで濡れた袖口を包むようにすると良い。③長襦袢が乾くまでハンガーにかけてつるす。いささか薬品臭がするので、必要ならば扇風機で風を当てる。
このやりかたは、結構時間と忍耐力がいります。あと、換気を良くして火気にご注意ください。
足袋もローテーションで使うのが理想です。わたくしは3枚持っております。足袋の洗濯も真剣勝負です。(笑)ちなみに普通の固形石鹸で、手で一生懸命に洗っていますが、長襦袢と同じで、履き口が汚れてくるのですね。つまり、肌があたる部分です。ここは洗いにくいので、古い歯ブラシで洗っております。足の裏は、意外と汚れません。谷崎潤一郎に見せたいくらいに綺麗なもんです(意味不明)。
手入れとは話がずれますが……足袋については、左右間違った種類のを履かないように、履き口の裏のところに、「源氏物語」の巻名を油性マジックで書いています。「葵上」とか「桐壺」とか。自分だけが分かる楽しみでございます。
その4:半襟は最初は「白」が良いです
私は不器用で、襟芯(三河芯)を半襟に縫い付けてから長襦袢の襟の台につけるという裁縫をやりとげる自信が無いので(根性がない、ともいう)「装道」の美容襟を愛用しています。あれは便利です。襦袢の内側から、ざざざ〜と縫えば完成ですから。
実は、母親から美麗な刺繍半襟もいただいたのですが、「三河芯」をつける手間が面倒なので、ついつい美容襟をつけてしまいます。まあしかし、きものの初心者の方は、スタンダードな白襟がもっとも良いと思います。白糸で控えめに桜や梅が刺繍してあるようなタイプも可愛いですね。
理想を言えば正絹の半襟が最も肌を美しく見せますが、なにぶんにも価格が高いので、ポリエステルでも良いことにしましょう。
半襟は、柔らかすぎると、きものの襟に埋もれてしまいますし、硬すぎると、徐々に立ち上がってきてしまいます。適度な張りが肝要です。その点でも、この「装道 美容襟」は逸品だと思います。
↑大鼓の発表会での筆者です。この習い事のために、着付けを覚えたのでした。
その4:きものを愛すれば、きものに愛してもらえるでしょう
全てはこの語を申し上げる為に書いてきたのであります。
あなたが、きものを愛おしんで、一生懸命にお手入れをし、眺めながら「可愛いね♪好き好き♪」と心の中で(口に出したらちょっと怖い)呟けば、きものはあなたを、かぐや姫の如くに、紫の上の如くに、待賢門院の如くに美しく演出してくれることは間違いありません。わたくしが断言します。
本当にきものとは、忠実なのですよ。ペットとおなじくらいにね。
そのかわり、いい加減に身にまとっては意味がありません。美女になるぞ!と意気込んで装ってくださいませ。というわけで《女性編》はここまでです。引