小説の未来(10)

我々のほとんどは、自分の意思、常識で行動していると思っています。そのことは、決して間違いとは言えないのですが、それでは、我々の心を動かしている常識は、いったいどこから来たのでしょうか?この常識を作り、それを我々の潜在意識に刷り込ませているのは、他でもない、我々が妄信している国家なのです。

 

 小説家にとって、国家を登場させる場合、かなり厄介なのです。作家は、学者でもなければ評論家でもないわけです。国家について書いたとしても、それは、フィクションとしての国家なのですが、読者は、作家が現実に国家をそのように考えていると判断しかねないのです。

 

 だからと言って、護身のために、作家が、国家行為を無視した作品を書くわけにはいかないのです。前述したように、人の心と行為は、国家にコントロールされているからです。また、当然のことなのですが、人物を描く場合、必然的に国家がかかわってくるのです。

 

 私は、これからも、疑い深い作家であり続けると思いますが、作家たちは、それぞれに個性があり、それぞれの信念をもって歩み続ければいいと思います。これから、作家を志す人たちは、疑う心を失わず、勇気をもって自分の道を突き進んでいってほしいと願っています。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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