小説の未来(7)

⑪沢富刑事シリーズ「女優」では、売名行為のために二人の漫才師を自殺に見せかけて殺すという、女優、桂子の愛情を利用した完全犯罪を描きました。中洲芸能大学の学生、田柴と崎山は、日本一の漫才師を目指して、漫才の稽古に打ち込んでいたが、卒業漫才が不評で卒業できなかった。そこで、やむなく学費を稼ぐために、二人は奇妙なバイトを始めることになった。そのバイトとは、人間の内臓を取り出すという気持ち悪いバイトで、崎山はどうにかこなしていたが、田柴にとっては苦痛を伴うものだった。次第に、田柴の体調がおかしくなり、ついには、精神異常に陥ってしまった。

 

 田柴は、次第に自殺願望が芽生え、一緒に死のうと自殺を崎山に持ちかけるようになった。困り果てた崎山は、田柴の彼女桂子にこのことを相談すると、田柴の自殺願望の原因は自分にあるといって、桂子も自殺したいと言い張った。崎山は、田柴の自殺願望は桂子が原因ではないとひたすら説得したが、桂子の自殺の意思は変わらなかった。結局、すべての責任は、自分にあると思った崎山は、自分も自殺する決意をした。

桂子は、崎山の自殺意思を確認すると、三人で自殺する計画を立てた。その計画とは、二人が確実に死んで桂子だけが生き残る計画だった。自殺決行の日、桂子は、管理人に分からないように寮の小さな窓から侵入し、3Dプリンタで作った拳銃で自殺を図った。その自殺とは、田柴は崎山を撃ち、崎山は桂子を撃ち、桂子は田柴を撃つという自殺だった。崎山の合図で、一斉に拳銃の引き金を引くことになっていたが、田柴の銃声を確認した桂子は、うまくいったと思い、即座に、引き金を引いた。

 

自殺を固く決意していた崎山であったが、結局、桂子に好きだと打ち明けられた崎山は、桂子に対して引き金を引くことができなかった。恋愛心理に精通した桂子は、“崎山は愛してくれている人に向かって引き金を引くことができない”、という心理を推理していた。その推理は的中し、ものの見事に桂子だけが生き残る自殺計画は成功した。また、元カレが自殺したということで、桂子は一躍時の人となり、女優の道も開けた。沢富刑事は、窓の外に残された27センチの靴跡に疑問を持ったが、結局、ホモの関係にあった男二人の相打ち自殺ということで事件は処理された。

 

このドラマでは、また、お金に困ると有償の臓器提供、原発労働、不法バイトなどにかかわってしまう反倫理的側面も描いています。現在、世界中で高額な金額での臓器売買がなされ、特に、新興諸国では誘拐された子供が腎臓を奪われ、殺されるという悲劇が起きています。金持ちが生き延びるために、貧乏人が殺されるという、富裕層と貧困層を浮き彫りにしました。

⑫亜紀ちゃんシリーズ「ホワイトレディー」では、人とカラス、ハト、犬、猫たちとの触れ合いを通して、友情を描きました。長崎平和公園で子供たちに平和のパフォーマンスを見せている白いハトたちが、はるばる糸島にやってきます。そして、彼らは、二見ヶ浦、芥屋の大門、姫島、など糸島の観光スポットを巡ります。彼らの糸島観光を通して糸島を紹介させていただきました。また、白いハトのホワイトレディーたちは、亜紀ちゃんたちとのパーティーで、“幸福と戦争”について語り合います。

 

 この物語では、動物たちが戦争をする人間の愚かさについて語ります。悲惨な戦争を経験した日本は、二度と戦争をしないようにと平和を願う平和記念像を建造し、子供たちに平和を訴えています。それにもかかわらず、“正義の戦争”と称して今なお各地で戦争する人間たちの狂気を動物たちは非難しています。亜紀は、戦争に勝利することが、幸福をもたらすと思っていたが、多くの人々を殺して戦争に勝利しても、幸福にはつながらないことに気づきます。

 

 小学生、中学生向けに分かりやすく書いています。ぜひこの機会に、戦争によって幸福は生まれない、このことを子供たちに理解していただきたいと思います。 

 

春日信彦
作家:春日信彦
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