小説の未来(5)

④コロンダ君シリーズの主人公は、法務大臣の父親の意向に沿って政治家になっていく青年コロンダ君です。彼は、T大文Ⅰ卒業後、警察庁のキャリアから弁護士、参議院議員と転職していきます。本人は、小説家を志していましたが、文才がないことに気づき、挫折しました。コロンダ君の父親の愛人お菊さんが、脇役としてドラマを盛り上げます。お菊さんは、京都の老舗料亭の娘で、文才に恵まれた彼女はエロ小説家として活躍していきます。コロンダ君の実の母親が亡くなってからは、お手伝いさんとしてコロンダ君と一緒に生活しています。

 

「ありふれた殺人」は、同性愛者の片方が結婚するということから起きるソープランド殺人事件で、殺人現場は男が遊ぶソープランドです。刑事は、犯人は当然“男”と思い込み、まったく見当はずれの捜査をします。本来事件には首を突っ込むことができないのですが、詮索好きのコロンダ君は、県警本部長にお酒を飲ませながら言葉巧みに誘導尋問をして、彼からある程度の情報を手に入れました。

 

そして、東京に帰ったコロンダ君は、女性心理に詳しいお菊さんに相談します。いつもは、名推理をするお菊さんも不可解な事件にお手上げ状態になりました。お菊さんは、親友の女性が何か事件のカギを握っているのではないかとひらめき、福岡に行っての聞き込みを提案します。コロンダ君は、糸島市のレストランで親友の女性に会い、いくつかの質問をしました。その返答の様子から、もしかして、彼女が犯人では?と直感しましたが、問い詰めることができず、素直に引き下がりました。

 

一般常識にとらわれた刑事の捜査を通して、いったん思い込んでしまうと自分の考えに疑いを持たなくなるという特徴をドラマ化しました。この作品は、エドガー・アラン・ポー作の「盗まれた手紙」を参考に書いてみました。

⑤ゆう子シリーズの「友情をかけた嘘」では、裁判官を志す正義感あふれる親友横山の断腸の思いの嘘を描きました。ゆう子は、新体操の選手でオリンピック出場を目指す糸島中学3年生です。糸島高校に進学を決めていたゆう子は、突然年末に教頭から東京の名門高校への特待生に推薦されたが、幼なじみの菊池を忘れることができず、東京への旅立ちに足踏みをしていた。一方、菊池も大分の名門高校からスカウトされていたが、幼なじみのゆう子から離れることができず、ゆう子と一緒の糸島高校への進学を望んでいた。

 

横山は、このままでは、ゆう子のオリンピックへの道は途絶えてしまうと思い、二人に嘘を言って、それぞれの夢に向かわせる決意をした。ゆう子は、“菊池は大分の名門に進学する”という嘘を横山に聞かされ、信じていた菊池に裏切られたと思ったゆう子は、東京へ旅立つ決意をした。ゆう子の決意を聞かされた菊池も、甲子園のマウンドに立った晴れ姿をゆう子に見せようと大分へ旅立った。

 

ゆう子は、福岡空港を飛び立たった飛行機の中で菊池からのメールを開き、その時初めて、横山の嘘に気づいた。そして、正義感あふれる横山の断腸の思いを考えると涙が止まらなかった。ここでは、親友の夢を後押しするために心で涙する横山の友情を描きました。

サーファーヒカル
作家:春日信彦
小説の未来(5)
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