小説の未来(4)

脳機能の興味から小説へ

 

小学校、中学校の頃どのようなことを考えていたかは、ほとんど忘れてしまいましたが、小学5年生のころ見たアインシュタインのドラマに感銘を覚えた記憶があります。気持ち悪い傷だらけの顔を持った人造人間に恐怖したのではなく、人間が人間を作るという点に感銘を覚えたのです。その頃から人間がいずれ人工的な脳を作れる日が来ると思うようになりました。すでにAIが開発されていますので、それは、夢ではなくなったわけです。今考えると、脳機能への興味が、小説を書くことへつながっていったように思えます。小説を書く下地は、小さいころからあったのかもしれません。

 

安部公房がインタビューで「小説は、意味に到達する前の世界を描くもの」と言ったように覚えています。記憶が正しいかどうか定かではありませんが、なんとなくわかるような気がします。東大卒の安部公房のような秀才ではないので、私レベルの小説しか書けませんが、私も小説を書いているとき、霞がかかった迷路に迷い込んで、もがき苦しんでいる自分に気づくことがあります。まさに、恋愛こそぼんやりとしていて、説明がつかない世界じゃないでしょうか。でも、どういうわけか、合理性のある知的推理小説より不可思議な恋愛小説のほうが好きです。

 

 私が書く小説のほとんどは恋愛小説なのですが、恋愛と言っても大人の男女間の恋愛だけを意味しているわけではありません。男女、同性、親子、兄妹、姉妹、先生と生徒など人間同士の感情です。人間は、言語を持ち、知性的に行動し、国家社会を作り出します。でも、人間は、生物学的に動物なのです。動物だからこそ、人間の動物的側面を考察していかなければ、人間を知ることはできないと思っています。恋愛感情は、すべての動物に共通する精神活動と思っています。

 

 川端康成の「伊豆の踊子」は多くの女性の方が読まれたことのある小説ではないでしょうか。まさに恋愛小説ですが、私が気にいっている点は、人生の宿命を描いている点にあります。人間を考えるとき、医学的とか経済的とか社会的とかのように合理的に考えられる側面より、生まれながらに与えられた性とか環境とか性格とか、そのような宿命的なものに興味が惹かれます。すべての人間は、個人としては何らかの相違があります。その相違の一つに宿命があるように思うのです。

 

糸島について

  

話はかわりますが、私が卒業した高校は、剣道で有名だった糸島高校です。“だった”というのは、平成に入っては優勝していませんが、昭和の時に、玉竜旗(ぎょくりゅうき)で4回優勝した経験があるからです。また、糸島中学からの伝統を持つ糸島高校は、糸島市にある唯一の県立普通科高校です。都会の進学校から比べたら、これと言って秀でたところのないのんびりした田舎高校でしたが、私にはあっていたように思います。

 

田舎高校のおかげなのか、能天気な私も、どうにか浪人後福岡大学に合格できました。大学卒業後、小説を書くのにいずれ役に立つと思い、生命保険会社に入社しました。入社後、県外勤務を経験したのですが、故郷を離れて初めて、糸島の素晴らしさを知りました。早期退職後、趣味の小説を書きながら糸島で生活していますが、私には、田舎が似合っているとつくづく思っています。糸島には、これといった名所はないのですが、歴史を感じることができる住みよい街ではないかと思っています。

 

福岡県の西端に位置する糸島市は、平成22年に前原市、二丈町、志摩町、の12町が合併してできた人口約10万人の市です。また、農林水産業が中心で、市というより町のような田畑と山林の多い田舎町です。糸島市は、古墳が多く、日本一大きな銅鐸が出土した平原遺跡(ひらばるいせき)のあるところでもあります。度々、電子書籍作品で糸島が出てきますが、糸島が特に風光明媚だからではなく、自分が田舎育ちで、個人的に田舎が好きだからです。

 

最近では、地産地消を売りにしている道の駅“伊都菜彩(いとさいさい)”が全国的に有名になり買い物客で賑わうようになりました。さらに、福岡市に近いということもあって、移住される方も増えてきました。さらに、今年に入り、私の家の隣にはシンニホン未来農業社が運営する“オリーブ園”もできました。オリーブの花言葉は、「平和」なのでとても気分がいいです。将来、糸島市が“歴史とオリーブの街”と呼ばれるようになればいいな~~と思っています。

サーファーヒカル
作家:春日信彦
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