小説の未来(3)

どういう作家を参考にしたらいいですか?

 

 プロの作家は、いずれも技術的に優れているわけですから、できる限り多読して、自分好みの作家を探し、特に好きな作家を参考にすればいいと思います。時代によって使われている言葉は違い、時代背景も違うので、単に文章をまねるのではなく、作者がどんな思いを言わんとしているかを考えて、表現方法をまねるといいのではないでしょうか。私が好きな作家も含め、参考にしている作家を挙げてみます。

 

 松本清張。「砂の器」「点と線」「波の塔」「十万分の一の偶然」「黒革の手帳」「ゼロの焦点」「夜光の階段」などの作品があります。彼は心理面の描写が奥深くて、勉強になります。ぜひ、参考にしていただきたい作家です。お薦めは「波の塔」「十万分の一の偶然」です。

 

森村誠一。「人間の証明」「腐蝕の構造」「流氷の夜会」「死媒蝶」「夜行列車」「海の斜光」「初恋物語」などがあります。松本清張と似たところがあり、心理面の描写に優れ、ドラマの背景にある社会構造についても具体的に記述しています。お薦めは「腐蝕の構造」「初恋物語」です。

東野圭吾。「放課後」「卒業」「天空の蜂」「浪花少年探偵団」「魔球」「十字屋敷のピエロ」などの作品があります。彼の作品は分かりやすく、科学的知識を使ったトリックが面白いです。お薦めは「天空の蜂」「浪花少年探偵団」です。

 

夏目漱石。「坊っちゃん」「吾輩は猫である」「三四郎」「こころ」「草枕」などがあります。人生を真摯に見つめる心とユーモアにあふれた感性が素晴らしい。お薦めは「坊っちゃん」「草枕」です。

 

 三島由紀夫。「仮面の告白」「潮騒」「金閣寺」「宴のあと」「音楽」などがあります。少し分かりづらいところがありますが、時代背景を考えながらゆっくりと読まれるといいでしょう。お薦めは「音楽」「宴のあと」です。

 

 安部公房。「R62号の発明」「砂の女」「他人の顔」「燃えつきた地図」「内なる辺境」「夢の逃亡」「無関係な死」「愛の眼鏡は色ガラス」「砂漠の思想」などがあります。かなり抽象的な内容で分かりづらいですが、彼の考え方は勉強になりました。私は、彼の考え方にかなり影響を受けたように思います。ぜひとも読んでいただきたい作家のひとりです。お薦めは「砂の女」「砂漠の思想」です。

 

春日信彦
作家:春日信彦
小説の未来(3)
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