小説の未来(1)

 人間以上の脳を持ったロボットは作りえても、所詮、「機械」であって、「生物」ではないのです。人間が生物以上に秀でた機械を作り出すことができても、その機械は生物である人間にはなりえません。今後、人間は、高度な機械を創造し続けることができるでしょう。でも、先ほど言いましたように、機械は、生物に限りなく近づくことはできても、生物には、なりえません。

 

言いたいことをまとめると、人間は生物であり、生物である人間を動かすのは、最終的に「欲」だということです。だから、「欲」を持った人間が人口知能を使う限り、人工知能が人の幸せに使われるとは限らないということです。

 

だから、人工知能を発達させると同時に、人間が持つ「欲」についても考えて行かなければならないわけです。機械には存在しない「欲」について考える場合、科学的(論理学的、数理学的、生理学的、医学的、等)方法と芸術的(映像学的、哲学的、宗教学的、文学的、等)方法があるように思います。

 

そこで、私としては、これからもフィクション小説を用いて人間が持つ「欲」を考察していきたいと思っています。

作家の使命

 

 人間はいろんな欲を持っていますが、欲というのは、その人が置かれている環境によっても変化していきます。身近な欲としては、食欲、性欲、金銭欲があげられますが、名誉欲や権力欲といった高次元の精神的な欲を持っている人たちもいます。

 

人は、欲を満たすために生きていると言ってもいいのではないでしょうか。お金を得たいという欲が働き会社で働き、苦しみから逃れたいという欲から神様を信じ、苦労せず大金を得たいという欲から博打をします。また、憎しみをはらしたいという欲から人を殺したりもします。

 

 自分の気持ちを見つめていると、常に自己満足を求めているように思われます。労働の対価である給料をもらって喜ぶ、音楽を聞いて気持ちよくなる、大学に合格して学歴を手に入れて喜ぶ、競技で相手に勝って喜ぶ、係長から課長に役職が上がって喜ぶ、恨みを晴らして喜ぶ、ゲームをして喜ぶ、大好きなチョコレートを食べて喜ぶ、などなど数え上げればきりのないほどの自己満足があります。

 

 人は生きている限り自己満足を求め続けます。自己満足する方法には、いろんな方法がありますが、若者に人気があるのは、スポーツ、音楽、ゲームではないでしょうか?これらの三大娯楽は、当分続きそうです。

小説はどうでしょうか?今、ゲームより読書が好きだという若者は、どのくらいいるでしょうか?皆無に等しいのではないでしょうか?その原因にゲームより面白い小説がないということがあげられます。

 

 今後、ゲームより面白い小説が現れる気配は感じられませんが、これからの作家は、若者を引き付けられるような作品を提供できるように試行錯誤を重ねなければならないでしょう。確かに、面白くて、かつ有益な小説を提供することは至難の業と言えます。

 

 だからと言って、刹那的な娯楽を提供するような金儲けのための作品が王道を歩くようでは、作家の品位も価値も低下してしまいます。これからの作家は、金銭的な報酬に恵まれないイバラの道を歩むことになると思われますが、小説の存続のために悪戦苦闘していただきたいものです。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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