小説の未来(1)

人は、行動し、言葉を使い、感情を抱きます。それらは、同じ人間でも、細かな点において、違いが出てきます。そんなことは、当たり前じゃないか、とおっしゃるでしょう。まさに、同じ人間でも、まったく同一じゃないのです。いかなる生物も、まったく同一な生物は、存在しないように思います。

 

また、人は、脳を機能させて生きています。遺伝子的異常や後天的障害による変質を除けば、脳の仕組みは、ほとんど同じです。でも、脳の機能には、犬の例で述べたように、細かな点において違いがあります。

 

 そこで、言語を生み出す「脳」について少し考察してみましょう。脳を考える上でどのようなアプローチ方法があるのでしょうか?脳を物理学的、生物学的、生理学的、化学的、数理学的、統計学的に考えて行けば、脳は、解明できると思われるかもしれません。

 

でも、やはり、脳の機能は、無限に変化していきますから、数理的に脳の機能をとらえて行っても、永遠に追跡していかなければならないことになります。人間が保有する脳は、生物としての生命があるという点から考えて、有限と言えますが、脳の機能は、機能している限り無限と言えます。

では、無限の機能を有する脳をどのようにとらえて行けばよいのでしょうか?別に悩むことはない、自然科学と数学に任せていれば、いずれ解明されるとおっしゃる方もいるでしょう。

 

恋愛感情や宗教観念も、所詮は、脳機能にすぎません。ならば、科学によって、いかなる脳機能もいずれ解明され、脳機能は人為的に自由自在に操作できるようになる、と言えなくもありません。

 

 人間の脳は、人工知能を開発しました。今後、ますます、人工知能は発達するでしょう。もしかすると、脳以上の機能を持った人工知能が出来上がるかもしれません。たとえそうなったとしても、人工知能と生物としての脳は、同一とはならないでしょう。

 

高度に発達した人工知能は、分野的には、人間の脳を凌駕すると思いますが、今後どんなに発達しても、機械である人工知能は、生物である脳と同一にはなれません。

 

 人間以上の脳を持ったロボットは作りえても、所詮、「機械」であって、「生物」ではないのです。人間が生物以上に秀でた機械を作り出すことができても、その機械は生物である人間にはなりえません。今後、人間は、高度な機械を創造し続けることができるでしょう。でも、先ほど言いましたように、機械は、生物に限りなく近づくことはできても、生物には、なりえません。

 

言いたいことをまとめると、人間は生物であり、生物である人間を動かすのは、最終的に「欲」だということです。だから、「欲」を持った人間が人口知能を使う限り、人工知能が人の幸せに使われるとは限らないということです。

 

だから、人工知能を発達させると同時に、人間が持つ「欲」についても考えて行かなければならないわけです。機械には存在しない「欲」について考える場合、科学的(論理学的、数理学的、生理学的、医学的、等)方法と芸術的(映像学的、哲学的、宗教学的、文学的、等)方法があるように思います。

 

そこで、私としては、これからもフィクション小説を用いて人間が持つ「欲」を考察していきたいと思っています。

作家の使命

 

 人間はいろんな欲を持っていますが、欲というのは、その人が置かれている環境によっても変化していきます。身近な欲としては、食欲、性欲、金銭欲があげられますが、名誉欲や権力欲といった高次元の精神的な欲を持っている人たちもいます。

 

人は、欲を満たすために生きていると言ってもいいのではないでしょうか。お金を得たいという欲が働き会社で働き、苦しみから逃れたいという欲から神様を信じ、苦労せず大金を得たいという欲から博打をします。また、憎しみをはらしたいという欲から人を殺したりもします。

 

 自分の気持ちを見つめていると、常に自己満足を求めているように思われます。労働の対価である給料をもらって喜ぶ、音楽を聞いて気持ちよくなる、大学に合格して学歴を手に入れて喜ぶ、競技で相手に勝って喜ぶ、係長から課長に役職が上がって喜ぶ、恨みを晴らして喜ぶ、ゲームをして喜ぶ、大好きなチョコレートを食べて喜ぶ、などなど数え上げればきりのないほどの自己満足があります。

 

 人は生きている限り自己満足を求め続けます。自己満足する方法には、いろんな方法がありますが、若者に人気があるのは、スポーツ、音楽、ゲームではないでしょうか?これらの三大娯楽は、当分続きそうです。

春日信彦
作家:春日信彦
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