謎の鉄拳女子

コロンダ君は、東京の大学と聞いて、もしかして、今の眼鏡の女子は、例の鉄拳女子ではないかと思った。コロンダ君は、とっさに飛び出し、眼鏡の女子の後を追いかけたが、彼女は、ママチャリでゆっくり大通りに向かって下っていた。大声で呼び止めようかと思ったが、なぜか、言葉が出てこなかった。あとを追いかけてきたお菊さんは、いったい何事が起きたのだろうかと興奮して尋ねた。

 

「坊ちゃん、どうしたんです。突然、飛び出したりして」コロンダ君は、今の気持ちを話し始めた。「今の眼鏡の女子、きっと、例の女子学生ですよ。ピンときたんです。郷里に戻っていたんですね。留学と言えば、世間体はいいですが、間違いなく、国外への追放ですよ。大学も、いい手を考えついたものです。学生運動の火種を一つ消すことができて、心の中では、ほくそ笑んでいるんじゃないですか。だから、彼女はなんとなく寂しそうだったんです」

 

二人は、寂しそうに去っていく彼女の後姿をしばらく見つめていた。彼女の姿が消え去るとお菊さんがつぶやいた。「あの子だったら、やれるさ。自分の信じる道を歩めばいい。きっと、もっと強くなって、戻ってくるさ。警官二人も、ぶん殴ったんだ。頑張るんだよ。肝っ玉おば~も、陰ながら応援してるし。女性総理大臣を目指して、頑張るがいい」コロンダ君もうなずき、こんな田舎町に世界に誇れる女子がいると思うと、近い将来、日本にも女性総理大臣が誕生するような気がした。

春日信彦
作家:春日信彦
謎の鉄拳女子
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