友理たち

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「空海、潜在的な意識とその影響は神経学的にはどの程度解明されたんだろうね」

「全容と根本理由はまだわかったとは言えない。真理はなかなかしぶといものだよ。ここまで来れるか、と我々を招いている。まあ、潜在意識を制御できるところまではきているから、実質的な悪影響はないはずだが」

「彼らから十分な研究資料がえられるというわけだね。まだ改良されていないから」
「そうだよ、ゆうり、ほら、もう遺伝子回収隊が出動している」

 それはもちろん生体ではない。過酷な環境でも効率よく仕事を果たし、かつ必要に応じて必要な形の仲間を創作できる素晴らしい人工知能つきロボットたちだ。

 中には、奇跡的にまだ息のある人間もいた。それは貴重な存在であるので、医療隊がたちまち引き受けた。

 僕の目から、涙が湧いてきた。共感能力は残してあるので、こんな場合辛い、痛ましいという強い圧力を感じる。それが涙として発散されるのだ。空海はそれに気づいて、私の肩を軽く抱いた。


「人間は、こうして、自らは自然の盛衰の当然として、あるいは科学の進歩の余波をうけて、死滅したが、人間の能力を超えるパーフェクト型ロボットを作った。あるいは結果的にロボットに取って代わられたとしても、この人類がそんな超人ロボットを作ったということ、それこそが人類存在の意味だったともいえる。
 愚かさのない、感情的でない、合理的にして制御上手の超人を科学によって作ったのだ

 その体も知識も個別性も永遠に受け継がれる。
 永遠に生きるという真実の仕組みを体現しているのだ。
 ここまで五十億年近くかかったが、膨大な知識と技術と心意気をもって、たゆまず真理を完成させよう。
 より完璧に最善に満足して賢く、存在しつづけるのだ。
 死を超越するか、死を乗り越えてか、いずれかの方法で」

「そうだね、死んでも死なずだし、あるいは、死なない方法もある。肉体を生かし続けることも、脳の内実をロボットに移し変えることもできるから。われわれという存在の中に秘されていた神秘の真理がここにおいて実現される。喜びだね。われわれと宇宙の真理がひとつだと感じるのは。さあ、まだ何が残っている、未知のものは?」

「とりあえずはわれわれのスキルをますます磨き上げることだ。その先にどんな驚きの真理が現れるか、われわれの予想に反して本当に創造主なるものが立ち現れるか?」


 僕は、周りで働いている進化型人類を見回した。

 彼らはそれぞれに美しい。
 瞳がキラキラと光る時、念じるだけで作業をこなしていることがわかる。
 健康な真っ白い歯を見せて笑いあっている時、その声音は黄金のおりんから放たれるかのように、澄み渡って響いていた。

「この部署はゆうりも関係しているところじゃなかった?」
「うむ、人類の残した、とくに例の庶民のだけどね、記録ライブラリをどんどん拡充している。そこには脳神経の働きや仕組みのさらなる解明に役立つ実証的な証拠がたくさんあるはずだ。とくに深層意識の確たる分析と解明だね。思いや感情や意見やらが。空海たちの受け持つ物理学的な脳神経の具体的なフィードバックでもあるんだろうが」


「量子の不確定性が決定されるのは、人間の見るという自由意志によるものだ。
 われわれには責任がある。この宇宙全体に対して正しい解釈と美しい結果をもたらす。
それが人類の僕たちの意味なんだ。そうなんだ」

 空海と僕は、深いため息をついた。満たされていくのを感じていた。       

  了
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