これからの免疫力を高める習慣

腸内改善で免疫力を高める


 腸は免疫細胞のおよそ3分の2が集まっているため、「腸管免疫」と呼ばれています。また、免疫機能の7~8割近くが腸に集中しており、人体最大の免疫器官であるとされています。


 特に小腸では、マクロファージや樹状細胞、好中球やリンパ球といった免疫細胞が活躍して細菌やウイルスなどの異物が侵入してくるのを防いでいます。小腸に免疫細胞が集まっている理由は、小腸は栄養素の取り込み口だからです。そのため、栄養素と一緒に細菌やウイルスが血液内に侵入してしまうのを免疫細胞は一生懸命防いでくれているのです。


 また、免疫細胞の多くは、腸管だけではなく、腸管免疫器官から、呼吸器や口、眼、乳腺、生殖器などの粘膜へと送り出されています。


 さらに、腸内の免疫システムはアレルギーの発症の抑制とも関わっています。なぜなら、花粉症や気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、免疫システムが食べ物やほこり、スギ花粉など、特定のアレルゲンに対して過剰な働きをすることによって引き起こされるからです。 つまり、近頃のアレルギー症状の増加は、何らかの原因によって、腸を中心とした免疫システムに異常が起きたためだと考えられるのです。



 そのため、腸管免疫と呼ばれる腸は、免疫力を高め、感染症などの病気やアレルギー症状を防ぎ、体全体の健康を維持するための中心だと言うことが出来ます。



 近年、その腸には腸内細菌がおよそ1000種類も存在することが分かってきています。また、数は1000兆個にも及ぶため、腸内細菌の群生の様子は、お花畑になぞらえて「腸内フローラ」と表現されています。この腸内フローラを日頃の健康維持や免疫力の向上に役立てるためには、何といっても腸内細菌のバランスがとても大切になってきます。


 腸内細菌には善玉菌、悪玉菌、日和見菌が存在しており、その理想的なバランスは、東京大学名誉教授の光岡知足氏によれば、「2:1:7」だといいます。そして、腸内フローラの理想的なバランスを保つための方法としては、食物繊維やオリゴ糖など善玉菌のエサとなるものを腸に送り込む「プレバイオティクス」や、乳酸菌・ビフィズス菌などの有用菌を直接送り込む「プロバイオティクス」などがあります。


(腸内環境の改善の詳しい方法については、「腸内フローラ改善生活」のサイトを参考になさってください)。


 しかし、加齢やストレス、食生活の乱れなどが原因で悪玉菌が必要以上に増え、腸内細菌のバランスが崩れてしまうと、腸内フローラは変化し、便秘や下痢だけではなく、様々な病気を発症させる原因になってしまうと言われています。


 特に近年は腸内環境の悪化の原因のひとつに食べすぎによる「消化不良」が挙げられます。最初に免疫力の低下には「食べすぎ」が原因として関わっていると述べましたが、食べ過ぎは血液を汚すだけではなく、腸内の環境をも悪化させてしまうのです。


 ちなみに「消化不良」とは、糖質・たんぱく質・脂質という三大栄養素の摂り過ぎによって起こる現象のことです。


 きちんと消化されなかった糖質は腸内に溜まると「異常発酵」を起こします。また、たんぱく質は「腐敗」、脂質は「酸敗」といった現象を起こします。これらは全て、腸内に止まり続けることによってアンモニアや硫化水素、アミンやインドールなどの毒素や有害物質を産みだし、腸内の悪玉菌を増やすだけではなく、大腸がんの原因にもなります。


 もちろん、三大栄養素は人間の生体維持のために必要不可欠ですが、近年は加工食品やファーストフードの増加によって、必要以上に取り込まれている傾向があります。


 またそれらの食品は、高カロリー・高たんぱく・高脂肪なうえ、ビタミンやミネラルなど免疫機能の維持のために必要な栄養素をあまり含んでいないという問題もあります。そのほか、加工食品に多く含まれている砂糖やトランス脂肪酸、食品添加物などは、消化・分解されにくく、腸内の環境を悪化させてしまいます。


 したがって、腸内環境を悪化させないよう少食を心がけ、常日頃から食生活の改善によって腸内フローラのバランスを保つことが非常に重要です。また、少食を心がけ、食べ物をよく噛んで食べるようにすることも大切です。そのほか、お腹(腸)を冷やすと腸の働きが悪くなり、格段に免疫力が下がるため、冷たいものの食べ過ぎ・飲みすぎを避け、普段からお腹(腸)を温める習慣をもつことも必要です。

消化不良を防ぎ、免疫力を高める酵素


 糖質もたんぱく質も脂質も、胃から小腸へと至る過程で分子レベルにまで消化・分解されていきますが、その役割を担っているのは「酵素」の存在です。消化のための酵素には、代表的なものとして、でんぷんをブドウ糖に分解する「アミラーゼ」やタンパク質分解酵素の「プロテアーゼ」、脂肪分解酵素の「リパーゼ」があります。


 これらの消化酵素はだ液や胃液、膵液などに混ざって食物の消化のために働いています。先程、三大栄養素の消化不良は腸内環境の悪化の原因であるということについて述べましたが、普段、消化不良が起きないようその三大栄養素を小腸から取り込まれるよう分解しているのは、消化酵素の存在なのです。


 酵素は人間の体内では、食べ物の消化や吸収、解毒、エネルギーの代謝など、あらゆる生命活動の媒介として働いています。もし体内の酵素がきちんと働いていなければ、生命活動を維持したり、新陳代謝を活発にしたりすることは出来ません。車でいえば「バッテリー」のような存在なのです。


 また、酵素には「触媒」としての働きがあります。「触媒としての働き」とは、本来はくっつかない物質同士を結び付けて化学反応を起こさせることですが、分かりやすくいえば、カップルを結びつける仲人の役割のことです。


 酵素は人間の体内において、休むことなく「代謝」や「消化」、「解毒」のために働いています。その酵素が一生のうちで作られる量には限りがあり、酵素を使い果たしてしまうと、寿命を迎えることになるとされています。


 そのため、なるべく酵素を無駄遣いしない生活を送ることが長寿の秘訣になってくるのですが、近年は食べ過ぎの傾向によって酵素を消化のために必要以上に浪費していると考えられます。


 一度に大量の食物が胃の中に入ってきた場合、いくら酵素の力を以ってしても、全ての食べ物を消化するのは不可能です。そして先述した「消化不良」の問題が起こってしまいます。また、ファーストフードや加工食品にたくさん含まれている「砂糖」や「トランス脂肪酸」「食品添加物」なども、分解するのにたくさんの酵素が必要になります。


 さらに消化不良は、小腸内が炎症を起こすことにより、分子レベルまで分解されていない栄養素が血液中に入り込んでしまうという「リーキー・ガット症候群」と呼ばれる現象を引き起こすとされています。この「リーキー・ガット症候群」はアレルギーの原因になるとも言われており、深刻な問題になってきています。


 もし酵素が消化のほうにばかり使われてしまうと、「代謝」や「解毒」のほうにまで、なかなかまわらなくなってしまうと酵素栄養学では説明されています。そのため、「代謝」や「解毒」の能力が妨げられ、細胞の新陳代謝が滞り、生活習慣病をはじめとした病気にかかりやすくなってしまうのです。


 したがって、普段から酵素を消耗しないよう、普段から少食を心がける必要があります。また、酵素が多く含まれた食材を積極的に摂ることも大切です。


 酵素は主に生の野菜や果物、発酵食などに豊富に含まれています。そのほか、近年は酵素を補充するための酵素サプリメントが多く販売されるようになってきています。


 しかし、酵素は熱に弱い性質があり、50℃を超えると効果が失われてしまうと言われているため、加熱食や加工食品にはほとんど含まれてはいません。そのため、加熱食や加工食品を中心にした食生活を送ってしまうと、酵素が補充されず、どうしても酵素が不足しがちになってしまうのです。


 また、食物に含まれている酵素は、体内に摂り入れられることで代謝の働きをすることはありませんが、その代わり消化を助けると言われています。食物から消化のための酵素が補充されることによって、体内の酵素に余裕が出来ると、その分、「代謝」や「解毒」のほうにまわされるようになると「酵素栄養学」ではされているのです。


 つまり、酵素がたくさん含まれた生の食材を積極的に摂ることは、「消化」だけではなく、結果的に酵素の「代謝」や「解毒」の働きを助けることになり、そのことが免疫力の向上にもつながってくるのです。

 

 それに加え、腸に生息している腸内細菌も酵素を分泌しているため、腸内環境を整えることも重要になってきます。


 したがって、普段から酵素を大量に消費しないよう少食を心がけると共に、腸内環境を整え、酵素を積極的に補充するような食生活を送るようにすることは、健康維持のために何よりも大切なことだと考えられるのです。


より詳細な酵素と免疫力の関係については「酵素免疫生活」のサイトをご参照ください)。


 以上が、腸内環境の改善と酵素が免疫力に関わっている理由です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


伊澤晴秋
作家:伊澤晴秋
これからの免疫力を高める習慣
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