ホワイトレディー

亜紀は、みんなを守るために戦闘機のパイロットになりたかった。でも、守ると言うことは、戦争に勝つことで、多くの人を殺すことだと気づかされた。返事に困った亜紀は、しばらく、黙り込んでしまった。亜紀を助けるようにピースが話しはじめた。「亜紀ちゃんは、純粋に幸福を望んでいると思う。子供は、みんな、戦争なんて、いらないと思っているのよ。バカなのは、大人なのよ。人間は、大人になるにしたがって、幸福と言うのが、分からなくなってしまうのよ。亜紀ちゃん、大人には、ならないよね」

 

亜紀の目からは、涙がこぼれた。子供は、いずれ、大人になる。そして、戦争をするバカになってしまう。子供が、大人にならなくてすむ方法があるのだろうかと思ったが、どんなに、抵抗しても、大人になってしまうように思えた。突然、風来坊が、大声で話しはじめた。「みんな、人間ばかりを責めてはいけない。地球に住んでいるのは、人間以外に、動物や植物もいるんだ。そうさ、俺たちがいるじゃないか。亜紀ちゃんを助ければいいじゃないか。平和のために、亜紀ちゃんと一緒に頑張ればいいじゃないか。な~、みんな」

 

亜紀の脳裏に、突如、原爆を投下している戦闘機が浮かんだ。その戦闘機のパイロットは、亜紀だった。亜紀の体は、震えだした。亜紀は、正義と思っていた自分の夢が怖くなった。そして、自分に言い聞かせた。人を殺しても、幸福にはなれない。たとえ、原爆を投下されようとも、反撃のために、武器を持ってはいけない。話し合えば、きっと分かり合える。もっと、もっと、友達を増やせばいい。世界中の人たちが、すべて友達になるまで、友達作りをしよう。動物たちの思いやりを感じたとき、亜紀の目から涙は消えた。

春日信彦
作家:春日信彦
ホワイトレディー
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