そんな日々が続いた後のこと
ヴィーナスが見守っていた隣の街の者達が
その街へと攻め入ってきました。
隣の街は土地も狭く、その土地も痩せていて、
貧しい街でした。
発展した隣街をねたんで、小麦を奪いに来たのでした。
ヴィーナスは天上からそれを見ていて嘆きました。
「お願い。そんなことを望んだんじゃないの。
お互いに分け合って!争いをしないで!」
ヴィーナスは泣きながら、天から大きな声で呼びかけました。
けれどヴィーナスの嘆きは地上の人達には届きませんでした。
隣街の者達は小麦を全て奪い尽くすと、
街に火を放って焼き尽くしてしまいました。
心優しい人達が逃げ惑っているのをヴィーナスは成す術もなく
心を痛めて見ているしかありませんでした。
「ああ・・・街が・・・。」
ヴィーナスは人の心の醜さを生まれて初めて見たのでした。
それから心優しい人々の為に心を痛めました。
「こんな世の中では、私が愛する者に出会うこともできない。」
ヴィーナスは嘆いて、薔薇の花を残したまま
どこかに姿を隠してしまいました。