小さな星が運んだもの

二話



それからとても長い月日がたち

大勢の者達が天から地上へと旅立っていきました。

神様は産まれる前の人々に心をくだいて良く言い聞かせました。

「天で暮らした記憶は消えてしまうだろうが、
 
 

地上でも争いごとをせずに助け合って暮らすように。」

地上では人々が集団を作って、助け合いながら暮らしていました。

皆、天での記憶など全くないように暮らしていました。

でも人々は夜になると空を見上げ、星星に祈っていました。


少年は神様に聞きました。

「神様、僕の順番はまだなの?」

神様は考えながら言いました。

君はその星と旅する者

その星を眺めていて、今だと思ったら行きなさい。
 

その時には私は喜んで送り出すだろう。」


少年は星を抱いて眠る度に不思議な夢を見ました。

見たコトもないような物が夢の中に現れるのです。

それはこの天の物とも今の地上の物でもないようでした。

夢の中で少年は光り輝く世界で暮らしていました。

友達と笑いあったり、時には泣いていたり・・・

(生きてるってこんな感じなのかな?)少年は思いました。

それは一瞬の夢の中のことでしたが、

少年は自分が産まれ来る未来が待ち遠しくて

しかたありませんでした。


三話

そんなある日のこと

海の泡の中から一人の女神が忽然と姿を現しました。

その女神は新しい時代を造るために

天から地上につかわされた者でした。

美しいその女神は神様に呼ばれて天に昇りました。

その初々しい女神に神様は訪ねました。

「君には何ができるのだ?」

「私には美しい物を造りだすことができます。」

そう言って静かに微笑むと、

その女神の手から一輪の薔薇が生まれました。

「これは美しいものだ。素晴らしい。」

神様は女神の力に感心して、

新しい時代を造る者として期待を込めて

彼女をヴィーナスと名づけました。


ヴィーナスは新しい時代を夢見ていました。

それと、まだ見ぬ未来の愛する人を夢見ていました。

未来の愛しい人に捧げたいと願いを込めて、

その美しい花を心だけで産み落としたのでした。


地上では人々が街を作り始めていました。

人々は知恵を使い、辛抱強く工夫して、

生活をより良い物にするように日々働いていました。

ヴィーナスはそんな人達が大好きでした。

そして人々を微笑んで見守っていました。

ヴィーナスは街の発展を願って

「もっと、もっと大きくなあれ。」と呟きました。

そして、あの少年もまた未来を夢見て、

地上の人達を見守っていました。


haru
作家:文haru 絵ムラナギ
小さな星が運んだもの
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