あなたは、お葬式をご経験された事がありますか?
小学校の時に経験された方、あるいは大人になってから父母が亡くなったあるいは
祖父母が亡くなったと言う事があるでしょう。
中には、生まれた時から祖父母がいなくて、父母がお亡くなりになったのが50歳
あるいは60歳で初めてご経験される方もいらっしゃるでしょう。
私は、その人生の最後の儀式を携わっている葬儀社の者です。
この業界に入りすでに20年近くになりますけど
この業種は、実に不可解です。
知り合いからは、毛嫌いされ親からも嫌がられていました。
やり始めは、早く別な仕事をと思っていましたがなんとか今まで続いています。
それは、御遺族から感謝されたり御遺族からお礼として謝礼金いただいたり
あるいは、御遺族と友達になって一緒に釣りに行ったりとかもあります。
時には恋愛に発展する場合もございます。
でも、私が恋愛に発展したのはご主人を亡くされた未亡人とかではありません。
その家のお嫁さんとの恋の物語です。
私の名前は、高山明 31歳で葬儀社に勤めています。
3歳年下の妻の恵がいます。そして2人の間に2歳の娘の真希がいます。
ある、11月の中旬ごろの朝5時枕元の携帯がけたたましく鳴りました。
仕事が入ったとの電話です。
私は、隣で寝ている妻に「行ってくるからそのまま休んでて」と言い着替えて
肌寒い中まだ夜が明けきれない道をバイクで会社に向かいます。
会社は、アパートからわずか10分足らずの距離です。
この仕事をやり始めて夜中や早朝に呼び出しがあるのは慣れていますけど
家に残った臨月の妻と2歳の子が心配でなりません。
自分がいない時何かあったらどうしようとか考えています。
会社に着くと周りが暗い中うちの会社だけが明りが点いています。
会社で当番の人に「病院はどこですか?」と聞くと「家にきてくれと言ってました」と
ご遺体は自宅なのか聞いたら交通事故で病院に運ばれたらしくて
警察の検視が終わらないと引き取りが出来ないようです。
私は車に道具を積んで準備します。
「でも、どうして僕なんですか?」と聞きました。と言うのは当番は普通2人います
もう一人は、来ていません。そして会社には妻が臨月を迎えている事をあらかじめ
お話してありました。普通呼ぶ時は、もう一人を呼ぶはずなんだが聞いてみると
「高山さんご指名でした」「先方は依然お世話になったと言う事でしたよ」と言うと
「指名ならしょうがないか」と言って亡くなった方の名前を確認しました。
亡くなった方は、福田米子さんと言う方でした。この名前に覚えはないけど
しかも、住所も全然葬儀をやった覚えがない場所なんだけどとにかく向かいました。
私は、地図を見ながら目的地に向かいます。そこに着いたのが6時半でした。
車から降りて見ると凄い家です。住宅と言うより大邸宅と言った感じです。
一般の人とは次元の違うようないわゆる超金持ち今風に言うと超セレブです。
『こんな家庭は自分的には苦手だな』と思いながら中に入って行きました。
玄関の引き戸が普通の家の倍くらいあります。少し開いているので声を掛けました。
「ごめん下さい」と言うと中から男性が出てきて「高山さんお久しぶりです」と言い
スリッパを出してくれました。お顔を良く拝見すると以前私がお世話させて頂いた
小宮さんでした。
私は、「小宮さん久しぶりです。ところでこちらは?」と言うとその小宮さんは
「今回お亡くなりになった米子さんはうちの亡くなった母のいとこです。」と言いました。
それで、ご遺族も高山さんと面識があったので指名で連絡が着たようでした。
それにしても大きい家です、玄関だけでうちのアパートのダイニングキッチンより大きい
入って来て廊下を通り10畳以上のダイニングの前を通り応接間に入りました。
約12畳くらいの広さがあります。
この仕事をしているとつい部屋の大きさが気になります。何故なら祭壇の飾りや向き等
重要になってきますので部屋の間取りは、常に頭の中にいれます。
応接間に入るとそこには
喪主でありご主人の福田茂夫さん(78歳) その長男福田 茂さん(38歳)
長女福田孝子さん(47歳) 二女福田光子さん(45歳) 3女福田朝子さん(42歳)
以上ご家族5人に先ほどの小宮 毅さん(50歳)と私の7人で打ち合わせします。
ご主人とご長男は小宮さんのお母さんの葬儀で面識はありました。
小宮さんが「それでは、葬儀の打ち合わせしましょう。」と言ってくれました。
葬儀社にとっては間に入ってくれる方がいらっしゃると話が楽になります。
とりあえず、ご家族全員に名刺を配りました。「担当させて頂きます、高山です」と
一人ずつごあいさつをしました。