朝日は音も無くその姿を海上に現した。
聞こえるのは繰り返される波の音だけだった。
陽の端が海上に現れると、
人々から感嘆の声が上がった。
静かに上りくる太陽は
光線の関係なのか、赤々と静かに燃えているようだった。
陽は静かに上りながら
次第に黄金色にその姿を変え、
海も黄金色に染め上げた。
その美しさは声を無くす程だった。
二人は片時もその姿を見逃すまいと真剣に見つめた。
そして黄金色に染まった波をアルフが指指し
二人で見詰め合って微笑んだ。
「本当に最高だよ。」
アルフは今日この場に居られたことを神様に感謝していた。
「ええ、本当に。」
アンヌは心の中に陽が差してきたような
明るい希望とも呼べる物が心を満たしているのを感じた。
「さあ、皆さん。そろそろ社の中に朝日が差し込む時間ですよ。
朝日の差す社の中はそれは素晴らしいので、
どうぞ、その目に心に焼き付けて帰って下さいね。」
ガイドに促され、人々は社の中へと歩を進めた。
その人数は二十人程だろうか?
アンヌはワクワクしていた。
朝日の差すべナールは初めてである。
社は朝日に照らされ、既にその光で輝いていた。
それは荘厳とでも呼ぶべき姿であった。
二人はその光り輝く中へと足を進めた。
中でどよめきが聞こえた。
一歩中に足を入れると「わー。」とアンヌは声を漏らした。
アルフは信じられないという顔で
アンヌの手をぎゅっと握った。
それは光りの洪水とでも言うような見たこともない世界だった。
中央のクリスタルへと壁面の高い窓から光りが差し込み、
クリスタルの多面体が光りをあらゆる角度に反射させていた。
その光は四方の天使達の像を照らし出し、
たった今空から天使が降りて来たかの様な
錯覚を覚えさせた。
アルフも同じことを感じていたのだろう。
「君、天使が舞い降りて来たよ。」
アルフはアンヌに呟いた。
天使の顔は今にも愛を囁きそうに優しくアンヌの目に映った。