メイは、バーバラ先生と一緒に暮らせるのなら、人間なんかに戻らなくていいと思った。犬になって人間のおろかさがしみじみと分かった。CIAに脅されて、国民を欺く総理なんて、辞めたくなった。でも、CIAに抗議する勇気もないし、逆らえば、暗殺されるのは目に見えてるし、総理なんてやりたくなかったのに。メイは、心の中でぼやいた。「メイ、なに考えているの?心配事でも有るの?困ったことがあったら、何でも相談してよ」ピースは、青くなったメイの顔を見て、声をかけた。
しばらく、メイは黙っていた。自分が総理であることを告白すべきか悩んでいると、ドアが突然開いた。そこには、笑顔の美しいバーバラ先生が立っていた。「いらっしゃい、メイ、一緒に寝るわよ」バーバラ先生は、中腰になってメイを呼び寄せた。メイは、心の中で「バーバラ先生 バーバラ先生」と叫び跳んでかけていった。バーバラ先生にしっかりと抱きかかえられたメイは、全身から発散されるバラのような甘い体臭に包まれ、夢心地になった。
総理の寝室には、朝日が差していた。「あなた、いつまで寝ているの。今日は、大統領が来日する日でしょ。さっさと、起きなさい。なにが、バーバラ先生よ、夢でも浮気してるんだから」細君は、布団を剥ぎ取り、総理のお尻をぴしゃりと叩いた。「バーバラ先生!あ、夢か!」総理は寝ぼけ眼で、つぶやいた。