地下鉄のない街 第一部完結

地下鉄のない街127 真っ暗な被告席

「とても頭が混乱してます」

 皆川君はしかし西村の目をじっと見つめたまま真剣な面持ちでそう言った。混乱するからやめてくれというのではなかった。どういう意味か知りたい、少なくとも皆川君は西村の言おうとしていることに関心を持ち始めていた。

「ああ。当然だ。まずお前が信じることが可能な部分から話を始めよう。今皆川は俺とこうして、南堂社長の講演会を抜け出して廊下でしゃべっているわけだ」

「はい」

「しかしやってここに来たか覚えているか?」

 すっと何か憑き物が落ちたような表情になった皆川君はすぐに不安そうな顔になった。

「確かここに来る前は、西村さんの教団の応接室のようなところで南堂社長と三人で話をしていて…」

「そうだよ。その通りだ。そこでお前は南堂さんに純金を持たされてすっと意識が遠くなった。じゃあ、これはすべて夢の中の出来事か?」

 自分の顔に手をやった皆川君は手で軽くパチンと頬を叩いた。

「いえ、自分が眠っているようには感じません。でもあるいは、こうやって頬を触って確かめていることすら夢なのかもしれませんけど…」

「そうだな…。俺はな、皆川。これだけは何があっても譲れないところなんだが、もしある種の力を使って誰かが人を夢に中に落としたら、例えば夢の中でしか気がつくことのできないような何かをその人に見せてあげる目的で、その人を夢の中に突き落としたら、夢を見せたあと突き落とした人間は何がどうあっても突き落とした人間を元の世界に戻す義務があると思うんだ」

「これも夢ですか?」

「ああ、そうさ。これはお前の意識の奥深くの世界だ。お前自身の体は『東方暁の雫』の俺の部屋で眠ってるよ」

「こんなにリアルなのに」

「夢は自分で夢だと確かめられないから常にリアルなんだよ。さっきみたいに頬を叩いても、思いっきりつねっても、頬の感触を確かめたこと、痛みを感じたこと自体が夢の中の出来事かもしれない。お前がこれを夢だったと確信できるのは、例えば俺が何か合図をした時にお前の意識が覚醒して自分自身が南堂さんに渡された純金を右手に持ったまま教団の応接室で目が覚めた時だろう」

「はい」

「ところが、俺はお前にこの夢を見続けさせることだってできる。そうすればお前はこの世界そのものがお前の現実だと思って、応接室での出来事に至るまでの自分の人生は、昨日見た夢、むしろそっちが今の覚醒している世界から見た不思議な夢だったということになる」

「それは…困ります」

「ああ。そりゃそうだ。向こうの世界にはお前のご両親や春日井先生やその他かけがえのない人が、向こうの世界を現実として生きている人たちがお前がいなくなってしまったことを心の底から悲しむだろう」

「はい。多分…」

「もちろん俺はそんなことはしない。しかし春日井先生が彼女のやり方で、何か夢を見させて本当の自分、現実世界を生き直す手がかりを与えようとする以上のカウンセリングをしてしまうこと、見させた夢が現実だと思い込んでしまうまでのカウンセリングをあの人はやれてしまうわけだけど、それはある意味、俺が皆川をこのままこの世界に置き去りにするようなものなんだ。それは、おれは出来ない。世界の秩序の根本への冒涜だ。人間にはやってはならないことだと思う。例えていうなら、遺伝子操作でクローン人間を作るというレベルで、いやそれ以上の神への世界の根元への冒涜だと思うんだ」


 西村は淀みなく静かに、しかし確信を持ってそう言った。



「お話はわかってきました。でもそれが君島くん姉弟とどういう関係があるんですか」

 西村は話が通じたことにホッとしたのか、ふぅっと息をついた。



「春日井先生は個人レベルでそういう間違い、夢から醒めない夢をみさせてしまうことがある。自分でその重大さに気がつかずに、よかれと思ってね。しかし君島は、世界全体にそれをやっている。世界全体を醒めない夢に突き落とし、夢を見させ始めている。もちろんあの二人にその自覚はない。いや、お姉さんの方はことの重大さに薄々気がつき始めているようにも見えるんだが…」




 僕が何をしているって?

 僕は真っ暗な法廷の被告席に立ったような気がした。

 姉さんはそのことに気がつき始めている…って。

 どういうことなんだ一体…
 
 姉さん?今どこにいるの?

地下鉄のない街128 『地下鉄のない街』という魔書

「なあ、皆川」

 西村はロビーの長椅子に座って前を向いたまま言った。

「はい」

「おまえ、生き霊って信じるか?」

 皆川君は西村の横顔をそれとなく観察したが、西村はいたって真面目に話をしているようだった。

「生き霊ってあの…。源氏物語とかに出てくるあれですか…?」



 そういえば西村は時々こんな話し方をした。自分の仕事はSFのタイムパトロールだと言うところからこの皆川君の異世界の体験も始まっている。西村は重要な話をする時あえて斜めから話を始めて、聞く方は気がついた時にはすっかり西村の術中というか、話の核心に否応無く引き込まれてしまうのだ。



「そうそう。お前は二年だから古文の時間に源氏物語読まされてる最中だもんな。」

 苦笑しながら西村が言ったのは、うちの学校では二年生は副読本として年間を通じて源氏物語を読まされるからなのだが、それにしてもなぜ生き霊の話なのか、僕にも皆川君にもさっぱり分からなかった。

「六条御息所ってのが出てきたっけな。なんか哀れな」

「哀れですか…」

「うん、まあ、葵の上とか柏木に取り憑いて悪さをする怖いイメージなんだが、俺はちょっと違うイメージなんだな」

 今度はたまたま話の流れで自分が出した源氏物語の話になりそうで、皆川君はさすがに当惑の色を隠さなかった。

「ああ、わりいわりい。話は別にそれてないんだよ」

 やっと体をひねって皆川君を正面にした西村は、皆川君に形だけ弁解した。そして自信を持って意外なことを口にしたのだった。

「世界全体に春日井先生がやってるような夢を見させるようなことをやっている。さっき言った世界全体を醒めない夢に突き落とし、夢を見させ始めている君島兄弟ね…。特にあのお姉さん。お姉さんの気がつき始めたこと、していることというのを説明しようと思ってな。源氏物語の話し出してくれて話がしやすくなったよ。あの六条御息所の苦悩みたいなものの成せる技なんだろうなあ。お姉さんのあの力は…」




「力ですか…?気がつき始めたこと、していること?」

 話に流れがふっとぼやける一瞬にいつも西村の話の核心は飛び出してくる。僕も皆川君も次の西村の一言を待たざるを得なかった。

「六条御息所がさ、かわいいのは、いやかわいそうなのは…かな。自分では他の人間に取り憑いて悪さをするなんてこと思ってもみない所さ。確か六条さんは、じぶんがつらいのはしょうがないとしても、自分が知らない間に生き霊となって誰かの人生を変えてしまう、夢の中で人の運命を変えてしまうことに絶望して悩んでたね。似てると思うな、やっぱり」

「君島のお姉さんが…」

「そ、由紀子さん。多分弟の健太郎もその苦悩に気がついてないだろう」

 西村は断定的にそう言って口の端を少しあげて笑顔を作った。

「あなたは…」皆川君が口を開きかけたのを西村が遮った。

「うん。なんの根拠があってって、いう顔だな。うん、まあ根拠か…。惚れてしまった女だからかなあ。いや違う。俺だけが気がついたあの人のしんどさを俺なりになんとかしてあげたかったから…かな。すっぱり拒絶されてしまったけど…」



 西村がいうのはおそらく姉さんにラブレターを渡して云々という話のことだろう。無論皆川くんはそのことを知らないから、西村の中途半端な言い方に顔をしかめていた。



「おっとごめんな。話があっちこっち飛んで。じゃあ、ちょっと具体的にお前にも関係する話をする。いいな」

「はい」

「あのな、もうしばらくすると、というのは陸上競技会のことなんだが、あれが終わるとお前の春日井先生は一切お前の助けはいらなくなるだろう」

「え?」

「うん。お前に打ち明けた底知れない春日井先生の苦悩は一切解決していて、春日井先生はもはやお前なんか必要ではなくなるということさ…」

 皆川君の表情は今度は困惑に変わった。

「まあ、いいことではあるだろう。彼女の悩みはなくなるんだから。というかなかったことになるんだ、正確には」

「なかったことに?」

「そ。君島由紀子さんの春日井先生を上回る、いやすっぽり包み込むような過去の改変、人の運命を変えてしまう夢の力でな。ついでに皆川!」



 トンと西村は皆川君の肩を叩いた。

「お前と春日井先生はのほろ苦いいろんな思いでも消去されてなかったことになる。つまり春日井先生にとってお前はなかった事になるんだ」

「何でそんなこと…。そんなこと仮に起こるのだとしても春日井先生は望んでないはずだ…」

 西村の手を振り払いながら皆川くんは強く抗議した。


「いや、ところがそうでもないんだなこれが。このファイルには、春日井先生は自分で『ありがとう』って感謝の言葉を記してるよ」

 西村が座っていた廊下の長椅子のくぼみにさっきまでなかったファイルがあった。

「なんですか、これは」


「うん。この存在で俺も気がついたんだよ。君島姉弟がやっていることを。そしてそれを阻止しようと決めたんだ」



 何であのファイルがここにあるのかは分からなかった。しかし間違いない。皆川君が持ち上げた分厚いファイルはあれに違いなかった。


「『地下鉄のない街』…。なんですかこれは」

 皆川君はページをめくり、その中に春日井先生の署名や「ありがとう」という文字を見つけたようだった。



「うん。生き霊の哀しい活動記録…、いや記録じゃないな。そこに書かれていることが過去に遡って現実となる、夢の世界と現実界の裂け目にある魔書だな。これを読んでしまうと、自分の生きれてきた過去が作り変えられてしまう。春日井先生のカウンセリングと違う最大の恐ろしい点は、その改変されたことに誰も気がつかないことなんだよ。みんなすっぽり違う過去から現在を生き始めるんだ。だれもそのことに気がつかない。恐ろしいことだぜ、これは…」

 ページをめくりながら、皆川君の顔は青ざめていった。西村はその様子を見ながら話を続けた。

地下鉄のない街129 過去の改変

 青ざめた皆川君を見ながら僕は少し不思議に思った。確かに未来の時点から書かれているあのカルテ『地下鉄のない街』は皆川君にとって奇妙な文書だろう。

 競技会の八百長事件の後、自分の命を絶とうとして踏切で死に損ない、それから数十年も経って植物人間になった僕がまた奇跡的に意識を取り戻し、見舞いにきてくれた当時のみんなとの夢うつつの話をカルテとして綴ったのがあれだ。

 しかし、奇妙なのは間違いないとして、皆川君があんな風に恐怖で震えるようなことが書いてあっただろうか。




「どこ読んでるんだ。ああ、お前とドア春日井先生の病院での長い感動的な話の部分か。悪いけど俺も読ませてもらった。そう。そして最後にありがとう、って書いてあるよな」

 下を向いて一心不乱に『地下鉄のない街』のページをめくる皆川君に横に西村も座り直した。

「はい。ありますね」

「そのありがとうって書いてる春日井先生はもう四十過ぎだ。先生のことだからまあ、普通のオバサンにはなっちゃいないだろうがな」

「ええ。僕のことが書いてあるんですが…」皆川君の声が震えた。

「どれどれ」

「『今思えば競技会の八百長事件を苦にして自殺した皆川君のことは悔やんでも悔やみきれないけれど…』って、僕は自殺するんですか?」

 西村は皆川君の手から『地下鉄のない街』を取り上げるとページをめくって確かめた。




 僕は皆川君の狼狽の理由を知って納得した。確かに皆川君は競技会の後自殺するというのが歴史の事実だった。




「ああ、そうそう。そういう記述になってたよな。まいっちゃうよな。まだお前はピンピンしてるし、死ぬ気なんてないのになあ」

「それに『競技会の八百長事件を苦にして自殺』って、僕はまだその八百長事件の内容すら知らないんですよ。しかも西村さんからその話を持ちかけられようとしてますけど、僕は引き受けるかどうかも言ってない」

 西村は苦笑しながら『地下鉄のない街』を指で弾いた。

「まったくだよな、これなんかの作り話だったらいいんだが」

「そうですよ。実名の僕らを登場させて誰かがこれを小説として書いただけでしょ。あれ、待ってください。それを君島のお姉さんが…?」

 皆川君は信じられないといった面持ちだった。

「今待て、結論を急ぐな。その前に、おれはどうもこの『地下鉄のない街』というのが単なる実名小説だとは考えていないんだ。いや、正確には最初はそう思っていたんだが、どうも違うらしいと認めざるを得なくなったんだ」

「というと…」

「うん。すでに俺の周りで歴史の改変が始まってるんだよ。」

 眉間に軽くしわを寄せて自分で軽く頷いたあと、西村は確信を持って言った。

「歴史が変わっている…?」

「ああ。」『地下鉄のない街』を指差しながら西村が話を続けた。

「春日井先生の前の章に君島のご両親の記述があるだろう。同じように『ありがとう』って」

「ありますね。寝たきりになった健太郎が途切れ途切れの意識の中で、お父さんの当時子供にも知らせていなかった苦悩を赦すシーンを、ベッド横で口述筆記して『ありがとう』って書いてる」

「そうだな。お母さんも、お父さんとの確執から由紀子さんに辛く当たっていたことを理解してもらって『ありがとう』ってわけだ」

「誤解が解けて、理解もしてもらってめでたしめでたし、というわけですね」

 ゆっくりと首を振って西村は顔に少し渋面を作った。

「それがそうばかりでもない。実はあのご両親は俺の所、教団の方に子供たち、つまりあの姉弟のことで相談に来たことがあるんだ」

「そうなんですか」

「ああ。内容はもちろん口外はできないんだが、その相談事が消滅したらしい」

「消滅?解決じゃなくてですか?」

「ああ、母親の方は教団の信徒でもあるから、教団で見かけた時にその後どうですかって聞いてみたんだが…」

「はい」

「そんな悩み事は相談に乗ってもらった覚えはないし、何のことだかわからないということだった」

「妙な話ですね」皆川君は首をかしげた。

「ああ。すぐに解決するような種類の話でもないんだけどな。どうも解決したというのではなくて、そもそもそんな話はなかったということのようだ。俺がお前に持ちかけようとしてる八百長事件にしても、お前がそれを苦にして自殺する必要なんて全くないんだぜ。」

「その秘密があの『地下鉄のない街』にある?」

「ああ。どうも未来の地点で過去に遡って歴史が都合良く作り変えられて行ってるような気がするんだ」





 しばし二人の間に沈黙があった。それぞれどちらがそれを口にしようか譲り合っているようにも見えた。

「僕の自殺もその未来の時点の誰かの意志?君島姉弟の意志ってことなんですか?」

「お前の気になるところはもちろんそれだよな。じゃあ、俺の想像を語ってみようじゃないか。おそらく当たっていると思うんだ。そして当たっているかどうかは、この『地下鉄のない街』に新しい展開が出てくることで判明するだろう…。」



 僕と姉さんが未来の地点から過去を改変しようとしている…。そして現実に改変が始まっている?

地下鉄のない街130 魔書

「姉さん…聞こえるかい」

 心の中でそう言いながら、僕は目を閉じて深く息を吸った。

「うん。ここにいるよ」

 静かで落ち着いた声だった。その声を聞くと僕もいつものように安心する。たとえこれから聞こうとする話がどんな話であろうとだ。声のする右の肩の方に体をひねると、まるで遠いところから帰ってきた僕を迎えるような姉さんの瞳があった。


「姉さんは僕の知らないことを知ってるね」

「うん」

「…どんなことか、それは実は今は…あんまり興味がないんだ。不思議とね」

 あたりの風景は、舞台の照明をゆっくり落としたように、知らないうちにふっと闇の中に消えていた。

「うん」

 柔らかな日差しのようなうっすらと淡いオレンジ色、子供の時によく見た長い影を作る日没の時の太陽のあの色が姉さんの顔を浮かび上がらせていた。

「僕が知りたいのは、姉さんの知っていることが僕たちにとってどういう意味を持つかっていうことなんだ」

 うまく言えたかどうか分からない。



 


 僕は冴えない三十代のサラリーマンだった。毎日経理の仕事をしていた。仕事は別に不満はなかった。これといって他にやりたい仕事もできる仕事もなさそうだったし、でもそんな中でも職場の先輩には恵まれていた方だったと思う。周りの先輩同僚は、強烈な個性を持った刺激を受ける人というのではなく、朝出社して夕方退社するまで同じ空気を吸って違和感もなく、むしろ自分の日常のリズムをゆっくりキープしてくれるような人たちだった。それは、もちろん僕の理想とするものだった。

 それでも踏切事故で亡くなった姉さんのことを、僕は心の中でどこか受け止めきれずにいたんだと思う。受け止めるということがそれを忘却したり、何か「前向き」に生きていくための糧となったりすることを意味するのだとしたら、僕はそんな意味なんていらないと思ってきた。

 だから僕の中ではいつまでも姉さんの死は未解決のことであったし、解決するということ、例えばそこから何か教訓を引き出したり、思い出の中に姉さんを供養することなんてしてこなかった。未解決のことをそのまま抱えて生きるその中途半端さが、つまりは僕が、僕の大切なものを喪わずに生きているんだという唯一のリアリティであったからだと思う。

 だから…なのかもしれない。

 チャットで知り合った女の子に僕は惹かれた。こちらから言葉を入力して反応を待つ間、点滅するカーソルがその子の息遣いのように感じられた。僕の心のいびつな地層の断層に染み渡るように、ディスプレイを通じて何かが流れ込んできた。壊死しかかった僕の干からびた心に、初夏の陽射しにあぶり出されて浮かび上がった葉脈のような生命感が蘇った。



 そのことの奇跡に意味はいらないと思う。あえていえば、そのリアリティが生きる意味だという気がするから。だから、西村の言ったことは本当は僕にはどうでもいいことだった。

 ただ、あのチャットの女の子が実は死んだはずの姉さんであり、今こうして呼べばすぐに隣にいてくれるこの現実こそが絶対的な意味に他ならなかった。姉さんと千鳥ヶ淵を歩いている間に迷い込んだ世界で生き直した僕の世界のいったいどれが真実でどれが夢なのか、そのどれとどれが真実であり夢なのか、あるいはすべてが幻であっても構わなかった。

 僕にとって大事なのは、それぞれが夢まぼろしであったとしても、その夢がどこまで確かに続くのかということだけだった。



 伝わっただろうか…。僕たちにとっての意味とは、そういうことなんだ。いつかこの現実が終わるとしたら、それはなぜ、どんなきっかけで終末を迎えるのか、その時僕と姉さんはどうなっているのだろうか。


 僕が知りたいのはそれだけだった。




 姉さんは声には出さなかった僕の独白にかすかに頷くように微笑んだあと、ぽつりと言った。

「『地下鉄のない街』はね、そこに書いたことがすべて真実になる魔書なのよ。あたしも最初はそのことは知らなかったの」

 
ゆっきー
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