生きることは罪を犯すこと、そして罰を受け償うこと……。
――少年は、そう信じていた。
だがその実どうだ。一歩外の世界に出て辺りを見渡せば、力という何よりも強い免罪符を手にした者が無数に存在する。
そしてそれに比例して、理不尽な罪に泣き、悩み、苦しみ、最後には殺される者がいる。
力が現代に生きる人にとって“荒唐無稽な迷信”である限り、現実世界のあらゆる法はその意味が失われる。
意味の消失は力持つ者に驕りを生み、そうして罰を免れた彼等は、永遠に人が償えぬ罪をこの世に生み続ける……!!
「だったら……誰かが、どうにかしなきゃなんねぇのよっ!!」
ならば俺が罰そう。人の世が裁けないなら俺が彼の者を裁こう。そして、俺もまた償えぬ罪を、際限なく預かり重ねよう。
…………少なくとも、俺にならそれが出来る。罪を犯すのは俺一人だけでいい。
俺はこの場で罪を…………親父が与えたこの力で持って、許されざる存在である奴を裁き、罰するという大罪を犯そう。
決して揺るぎも歪みもしない、心に宿した一つの意思。もう一度その意思を脳の|頂点(てっぺん)に揺さぶり起こし、脩はその力を勢いよく、眼前の弩羅厳会総長に……自分にとっての絶対的な悪に向けて振り下ろした。
破壊の力の強大な撃力が生む、右腕をダイレクトに襲う熱波と衝撃が、少年を闘いという深淵の中へと埋没させていく…………。