仄の底

目を開く。ここはどこだ、と辺りを見回すと自分の家であった。寝床に上半身を起こした状態で私はいた。夜の寝苦しさに目が覚めたのだろう。部屋の中は暗い。室温は高い。心臓の音はうるさい程だ。気分を落ち着かせようと自分の顔に手をやって、どきりとした。びっしょり濡れているのである。ぞっとする思いで今まで見ていた気がする夢を思い出そうとしたが、断片的な記憶は何の意味も果たさず、ただ茫然とそこにいるしかなかった。夜はまだ明けないようだ。ぴちゃん、と私の中に水滴が落ちる音がした。

葛城
仄の底
0
  • 0円
  • ダウンロード

7 / 7

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント