その年の夏は馬鹿みたいに暑かった。
私は部屋を閉め切り、エアコンの効いた部屋で、何をするでもなく
ただただ、時間を持て余していた。
お膳の端に置いてあるビオフェルミンの箱。何故か私はそれから目が離せずにいた。
ただの箱である。中身は入っているが、それ以上でも以下でもない。ただの箱。
なのにそれから目が離せない。
嫌だな。
そう思った。それは直感だったのかもしれない。物凄く嫌な気分だった。
次の瞬間、箱の向こうから眼が覗いた。
それは、蟹の眼だった。
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