記憶の森 第一部

16・旅立ち

マサヒコとルシファーと長老達は
連れ立って樹の根元に行った。
そこにジョーカーが現れ、全ての者達が集った。

「よし、それではこれからみんな実を選んで、
 旅立ちの支度をする。
 それはこの実のそれぞれの記憶に委ねる。
 行く先のはっきりとは分からぬ旅じゃ。
 またこの樹の元で落ち合おう。
 では、好きな物を慎重に選べ。
 一人一つじゃ。
 そして、それが生まれ変わる心と記憶の源となる。」

ルシファーはマサヒコを促した。
「さっきの実を取りに行くんだろう?」
「ああ。」マサヒコは言った。

テイルもその傍である貴婦人の記憶に目を留めた。
「私、この人に付いて行くわ。」

それから長老とリクは一緒に実を選んでいた。
「わしは、一人で気ままに生きたいものじゃ。」長老は言った。
リクは「え!それじゃカイ探せないよ。」と言った。
「カイはそこで寝ておるじゃろ。
 ここに帰ればいつでも会える。
 それにな、おまえはカイと縁があるから、
 必ずどこかで会える。心配するでない。」と長老は言った。

ジョーカーと小さな星の一陣は
くるくると木の枝の周りを飛び回っていた。
かと思うとジョーカーは狙いをすまして、
ある一房をその鎌でバッサリと切り取った。

長老は言った。「では、みな準備はいいかな?」
「その房に願いを込めよう。そして、扉が開くよう祈ろう!」

「お前、何も実を持ってないよ。どうするの?」
とマサヒコはルシファーに聞いた。
「僕?お前の付き添いをするよ。」
「え?俺の?退屈しないか?」
「や、たぶんね、僕お前の身近な者として生まれ変わると
 思うんだ。」とルシファーは言い、
「ああ、じゃあ楽しみだ。」とマサヒコは言った。

「では、皆の者。行くぞ!
 皆の生きた証がこの樹を再び蘇らせるであろう。
 そして、また時が来たらこの樹の元で落ち合おう!
 いつとは言えぬ約束だが。」

長老の言葉に、皆房に願いを込めながら祈り始めた。
すると、マサヒコが来た時のように天が光り、
天の一部がぽっかりと口を開けてドロドロと渦巻き始めた。
皆、祈りながらドロドロとした中に吸い込まれていった。



haru
作家:haru
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