返り血を浴び、鮮血が目に入り漸く我に返った正太郎は、不気味に笑っていた。
(神の勝利だ・・・これでいい・・・悪魔は殺した・・・次は誰だ・・・何処の悪魔だ・・・・)
正太郎は浴室でシャワーを浴び、全身をくまなく洗った。
(汚い悪魔の血を洗い流す・・・・汚い・・・薄汚い・・・・)
着替えた正太郎はナイフを持って家を出た、繁華街のゲーセンに立ち寄る。
(いるいる悪魔だらけだ・・・一杯いるぞ・・・・成敗しなくちゃ・・・神のお出ましだ・・・)
完全に常軌を逸した少年は、神の降臨を理由付け己の行動を正当化している。
心が病んだ少年は、ゲームに興じている人々を次から次へ、頚動脈を切りつけていった。
辺りは酷い惨状と化し阿鼻叫喚の地獄絵図である、阿修羅の如く犯行を続け店外へ走り去る。
犠牲者は十数人に上った、少年は最後の悪魔を退治しようと病院へ向かっていた。
全身血だらけの正太郎は走り続けるが、数台のパトカーから次々と警官が降りてきて正太郎に
立ち塞がる。
息を切らした正太郎が叫ぶ。
「この悪魔供が・・・はあ・・はあ・・・・みんな殺してやる・・・・俺は神だぞ・・・」
警官にナイフを振りかざし、大声を出しながら暴れる、やがて取り押さえられた正太郎は、涙を流
していた。
「なんで邪魔するんだ・・・・放せ悪魔め・・・・畜生・・・・」
正二の様態が急変したのは早苗が病院に着いたその時であった。
懸命な医師の治療も虚しく終わった、早苗は放心状態になり病室の外へ出て、そのまま階段を
上り屋上へ辿り着いた、最愛の夫を亡くし子供達にもつれなくされ、最早生きる術が見当たらな
かった、限りなく流れる涙で目の前が霞んでいく、無意識に屋上の鉄柵を越えた早苗は目を閉じ
ながら宙を飛んでいった。
この常軌を逸した家族は崩壊した。