なきまくら





よく朝になると なきまくらたちはみんな おしいれに入っていくと
たたんだ ふとんの上にのってねむりました

「 まくらが おしいれに入っちゃった 」

「 ちゃんと自分たちのお部屋にかえるのね おりこうさんね 」

「 まったく たいしたもんだ むかしから
『 なきまくらのやどる家には ねずみはでない 』と いわれているしね 

ゆめちゃんは 「 すごいね! 」と かんしんしました

お父さんは にこにこしながら いいます 
「 いつもきれいで ふかふかなふとんのある おしいれをこのむというし
お母さんが きれいにしてくれているから ここにきたのかもしれないね 」

お母さんは 「 まあ 」といって えがおになりました

「 それにしても ほんとうに いいまくらだよ しごとのつかれも すっかり とれたみたいだ 」

「 そうね なきまくらは人をぐっすりとねむらせて 
しあわせなゆめがみられる といいますものね
なぐさめまくらとか 子守まくらとも いわれていて わらべうたも あったんだもの 」

「 ゆめもね たのしいゆめをみたよ 
えーとね はねがはえた ライオンにのって 空をとんだの 」

「まあ それは たのしそうなゆめね ゆめちゃんよかったわね 」
「 うん! おかあさんは? 」

「 お父さんの およめさんになった日のゆめよ 」
おとうさんと おかあさんは しあわせそうにわらっています

それから
「 ありがとう またね 」と まくらさんたちに手をふって
おしいれをしめました




お母さんは 天気のいい日に ふとんを干します
ゆめちゃんも ぽかぽか たいようのにおいのする おふとんがすきです

お母さんは いつものように うたっています
おふとんを干しながら うたいます

夜は おしいれからでてきて 朝は おしいれの中で ねむるまくらたちも
天気のいい日には えんがわに出てきて ひなたぼっこをしながら ねむります

そんな日は お母さんのはなうたが まくらたちの子守歌
まくらたちは 気持ちよさそうに ねむります




おしいれの中のまくらたちは
夜の ねるころになると おしいれのなかから かりかりと ふすまをかぐり 
音をならして さいそくします
いつからか おしいれをあけてやるのが ゆめちゃんの しごとになりました

「 ふぁ~ みんな夜だよ・・でておいで・・ 」




あるばんのことです
お父さんは まくらをうらがえしにおいて ゆめちゃんに こう おしえてくれました

「 ゆめちゃん なきまくらには ひみつがあるんだよ 」
「 ひみつ? ひみつってなあに? 」

「 なきまくらのひみつは おなかにあるんだよ 」
「 おなか?ひみつのおなか? 」

「 うん 」と お父さんは うなずきました

「見てごらん なきまくらのおなかは ふだんはしっかりと むすばれているだろう?
それは ここに ちからが ふういんされているからなんだよ
なきまくらは おなかに 小さな うちゅうをもっているんだ 」

「 ちいさな・・ うちゅう? 」 ゆめちゃんにはなんのことだか わかりませんでした
「 ためしてごらん そうすればわかるよ 」

そう言っておとうさんは まくらのおなかのひもを ていねいにほどきました
ふわふわのあたたかそうな まくらのおなかが でてきました
由井青朗
なきまくら
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