なきまくら





ゆめちゃんたちが ふとんをしくと へやのすみにいた なきまくらたちは 
それぞれ 気にいったふとんをさがし 頭のところにちょこんと うずくまりました

おとうさんがつかっていた アンゴラもうふのまくらは おとうさんのふとんのうえへ
おかあさんがつかっていた 白い羽毛のまくらは おかあさんのふとんをえらびました

ゆめちゃんの そばがらの 花がらまくらは ゆめちゃんのふとんをえらびました
ひとつ お人形あそび用の綿のまくらは うろうろしたままです

「 ねぇ なにか なまえをつけてあげてもいい? 」
「 そうね 四つもあるんですもの まくらさんじゃかわいそうだわ 」
「 そうだね 何にしようか 」

「 ゆめちゃんのつかっていた花がらまくらさんは、はながらだから 花まくらにしようか? 」
「 はなちゃんのまくらみたいだから はなまくらじゃなくて ゆめまくらがいい 」

ゆめちゃんのつかっていた花がらまくらは ゆめまくら
おとうさんのまくらは おおきくて りっぱな ぱぱまくら
おかあさんの みみながのしろいまくらは まままくら
と なまえをつけました

そして ゆめちゃんが お人形あそびに使っていた ちいさなまくらは
ちいちゃんという なまえにしました




「 さあ はやくねないと明日においつかれるぞ 」と おとうさん
「 まぁ たいへん いそがなくっちゃね 」と おかあさん
「 はーい おやすみなさい 」と ゆめちゃん



「 おやすみー 」
「 おやすみなさーい 」

なきまくらは とてもやわらかくて 
みんな すぐにねむくなってしまいます




「 ああ やわらかいな・・ 」と おとうさん
「 ほんとね きもちいいわ・・ 」と おかあさん
「 まだ でんき けしてないよ 」と ゆめちゃん

「 そうげんのような においがするわ・・ それに、ふわふわの みみ・・ 」
「 それに・・ ぽかぽか たいようの においもするね・・ 」
「 でんき けさなくちゃ・・ 」

おやおや でんきをつけたまま  ねむってしまいました




よく朝になると なきまくらたちはみんな おしいれに入っていくと
たたんだ ふとんの上にのってねむりました

「 まくらが おしいれに入っちゃった 」

「 ちゃんと自分たちのお部屋にかえるのね おりこうさんね 」

「 まったく たいしたもんだ むかしから
『 なきまくらのやどる家には ねずみはでない 』と いわれているしね 

ゆめちゃんは 「 すごいね! 」と かんしんしました

お父さんは にこにこしながら いいます 
「 いつもきれいで ふかふかなふとんのある おしいれをこのむというし
お母さんが きれいにしてくれているから ここにきたのかもしれないね 」

お母さんは 「 まあ 」といって えがおになりました

「 それにしても ほんとうに いいまくらだよ しごとのつかれも すっかり とれたみたいだ 」

「 そうね なきまくらは人をぐっすりとねむらせて 
しあわせなゆめがみられる といいますものね
なぐさめまくらとか 子守まくらとも いわれていて わらべうたも あったんだもの 」

「 ゆめもね たのしいゆめをみたよ 
えーとね はねがはえた ライオンにのって 空をとんだの 」

「まあ それは たのしそうなゆめね ゆめちゃんよかったわね 」
「 うん! おかあさんは? 」

「 お父さんの およめさんになった日のゆめよ 」
おとうさんと おかあさんは しあわせそうにわらっています

それから
「 ありがとう またね 」と まくらさんたちに手をふって
おしいれをしめました
由井青朗
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