なきまくら





むかしむかし そのむかし あるむらに ひとりぼっちの 男の子がいてね
その男の子には 食べものも ねむるところも なかったんだってさ

それを かわいそうに思った 村にある おやしきの主人は 
「 しごとをてつだうなら かわりに 食べるものも ねどこも あげよう 」と いってね

主人は とてもよくはたらく その男の子を 本当の自分のこどものように かわいがったんだ
そして 男の子は 主人のへやのほかは どのへやでも入っても いいことになったんだよ

ある日 主人がようじで でかけていってね
男の子は そうじをしながら 帰りをまっていたら
主人のへやの おしいれから 小さな なき声と ものおとが きこえてきたんだよ
男の子はそれが 気になってたまらなくなり
ちょっとだけならと つい へやにはいって おしいれをあけてしまった

「 なにが入っていたの? 」と はなちゃん

「 中には おおきな なきまくらがいたんだよ 」

あんまり やわらかくて きもちがいいものだから
はじめのうちは いけないと思っていたんだけどね

「 うん それで? 」と ゆめちゃん

これが じぶんのものだったら と 考えるようになっていってね
そして 主人の るすのときは こっそりと まくらをもってきて
ねるばかりしていたんだよ

それから しばらくしてね 男の子とまくらは おやしきから いなくなってしまったのさ
主人は男の子をとても しんぱいして さがしたけどね みつからないから
となりむらまでいったんだよ

「 まくら もっていっちゃったんだ・・ 」と はなちゃん

「 となりのむらに 男の子はいたの? 」と ゆめちゃん

「 むらの中にはいなかったけどね でも 神社で男の子を見たひとがいたんだよ 」

それで主人は 神社に行ってみたんだけど やっぱり男の子はみつからない
主人は がっかりして帰ろうとしたんだ

そうしたら うしろから「 みゃーる・・ みゃーる・・ 」と こえがしてね
ふりむくと木のかげに まくらと おんなじ顔をした男の子が いたんだってさ





「 えーっ!男の子の顔が まくらになちゃったの? どうして? 」と はなちゃん

「 やっとみつけたのに かわいそう・・ 」と ゆめちゃん

ゆめちゃんも はなちゃんも びっくりしてしまいました

「 その男の子はね まくらがあんまり きもちがいいものだから ひとりじめにして 
ずっとひとりでねてたんだよ そうしたら まくらが顔にくっついてね
『 ねこども 』という おばけ人間になったんだってさ 」

「ゆめちゃんも はなちゃんも なかよくしていないと
『 ねこども 』になってしまうよ 」




「 『 ねこども 』はね いじめられないために 人のいないところで あそぶんだよ
でも さみしいから ときどき人里にでてきては またかくれてしまう 」




「 おばけでも人間でもないから いつもひとりぼっちで なくんだよ
いつかおなじ『 ねこども 』にであうまでね 」


はなちゃんは ゆめちゃんの たいせつな おともだち
ゆめちゃんは はなちゃんの たいせつな おともだち

『 ねこども 』になって ひとりぼっちになるのは とてもこわいと おもいました


「 ちょうだいっていって ごめんね ゆめちゃん・・ 」と はなちゃん
「 ううん わたしも ひとりじめして ごめんね・・ 」と ゆめちゃん

ふたりで ごめんなさいを いいあって
なかなおりをしました 

由井青朗
なきまくら
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