なきまくら





お母さんは 天気のいい日に ふとんを干します
ゆめちゃんも ぽかぽか たいようのにおいのする おふとんがすきです

お母さんは いつものように うたっています
おふとんを干しながら うたいます

夜は おしいれからでてきて 朝は おしいれの中で ねむるまくらたちも
天気のいい日には えんがわに出てきて ひなたぼっこをしながら ねむります

そんな日は お母さんのはなうたが まくらたちの子守歌
まくらたちは 気持ちよさそうに ねむります




おしいれの中のまくらたちは
夜の ねるころになると おしいれのなかから かりかりと ふすまをかぐり 
音をならして さいそくします
いつからか おしいれをあけてやるのが ゆめちゃんの しごとになりました

「 ふぁ~ みんな夜だよ・・でておいで・・ 」




あるばんのことです
お父さんは まくらをうらがえしにおいて ゆめちゃんに こう おしえてくれました

「 ゆめちゃん なきまくらには ひみつがあるんだよ 」
「 ひみつ? ひみつってなあに? 」

「 なきまくらのひみつは おなかにあるんだよ 」
「 おなか?ひみつのおなか? 」

「 うん 」と お父さんは うなずきました

「見てごらん なきまくらのおなかは ふだんはしっかりと むすばれているだろう?
それは ここに ちからが ふういんされているからなんだよ
なきまくらは おなかに 小さな うちゅうをもっているんだ 」

「 ちいさな・・ うちゅう? 」 ゆめちゃんにはなんのことだか わかりませんでした
「 ためしてごらん そうすればわかるよ 」

そう言っておとうさんは まくらのおなかのひもを ていねいにほどきました
ふわふわのあたたかそうな まくらのおなかが でてきました




「 さあ ひらいたよ ゆめちゃん ここに まくらのおなかに とびこんでみなさい 」

「 とびこむって どうやって? 」

「 おなかに かおをうずめるのよ ゆめちゃん 」と お母さん

ゆめちゃんは ちょっぴり こわかったのですが 
ゆうきをだして ふわふわの おなかに かおをうずめました

「 えい! 」
由井青朗
なきまくら
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