今度、きものを着よう その2

いとか。

男性の草履は、ネットで調べたところ、「福島履物店」というところが、通信販売をやっており、ここでお買い上げになった履き物は無料で修理してくださるとのこと。こういうところで買ってみるのもよいかもしれません。

 

履き物と足袋と、腰紐とハンガー。一見おかしい組み合わせですが、これらのものは、代替用品がないという意味で必需品なのです。これらを入手しましたら心置きなくきものが選べます。

 

《女性編》でも書きましたが、きものと帯は、一緒にお求めになるほうが賢いです。男性の帯は、基本的には角帯(かくおび)がよろしいかと思います。

兵児帯(へこおび)もありますが、角帯の締め方を覚えないと、袴がつけられません。それに、角帯のあの、適度な堅さは、背筋が伸びて大変気持ちのよいものです。きもの愛好者のかたで、「腰をきっちりと正しい位置に戻してくれるので、腰痛がなくなった」という方は結構います。

角帯は、ネット等ではびっくりするほど安いものもありますが、お店でしたら、ほぼ10000円からお求めになれます。わたくしが高島屋で観てきた結果ですが(笑)


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わたくしの所持する袋帯です。

 

 

その4:良いお店を選ぶことが極めて大事です

 

わたくしは、これを書くにあたって文献を探しました。見つけたのが「ビジュアル版 男のきもの大全」早坂伊織著 草思社刊 でした。著者の早坂伊織さんは、もう30年もきもの生活をされている方で、「男のきもの大全」というウェブサイトも主宰されている、「きもの伝承家」でございます。

結論を言うと、名著です。きものを着たい男性にとって、有用な情報が全部網羅されている。「きものとは日本人にとって何か」という本質の考察から、きものの種類の説明から、着付けから、手入れの仕方、そして、なんと親切なことに、「袴をはいたときにトイレはどうするか」まで全て教えてくれています。また、イラスト、画像も多く、この画像の多さで2200円(税別)は安い部類だとさえ思います。

【その4:良いお店を選ぶことが極めて大事です】

この本をお読みになれば、拙文はほとんど不必要と言っても過言ではないです。(苦笑)にもかかわらず、わたくしがこうして《男性編》を書いているのは、「こんな文献があります」というご案内にも、いささかの有用性があるかも、と思っているからです。

また、おこがましいのですが、「男のきもの大全」では余り触れられていない事柄を書く必要がある、とも思ったのです。それは、きもの店のなかには残念ながら、あまりきものについての知識がなく、さらにお客様のことも考えていないとんでもないお店が存在する、ということです。

わたくしはそういうお店にあたったことはありません。何しろ、きものそのものを買ったことがないからです。小物なら、お買い物しますけどね。チェーン店の「きもののさが美」です。ああいうところは便利ですね。

 

わたくしは実のところ、Facebook できもの業界の方とお友達になっているので、業界の内実を少し知っております。といっても、書けないことのほうが多いですがね。今年の9月に倒産した、銀座の某有名きもの店が、どうも危ないらしいというのも聞いておりました。

多くの雑誌にも取り上げられ、一見繁盛していたそのお店が、なぜ倒産したか。

お友達によると、お客様(女性)に対して、さほど質のよくない紬を、「作家ものだから1枚持つと後悔しませんよ」というスピーチで丸め込み、買わせる。しかし、お客様もそう馬鹿ではないので、徐々に「失敗した」と気がつく訳です。まして紬と言うのは、正式な場所などにはやはり着てゆきにくいものなので、お客様は「このきものは買うのではなかった」と思い、二度とそのお店には行かない。リピーターが来ないのです。


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これは男物の羽織の裏です。


きものは、なければ生活に困ると言うものではありません。だから、リピーターさんが来るような商売をしなければ、先細りになるに決まっているのに、目先の欲に釣られてしまう。わたくしのお友達の京都のきものプロデューサーさんは「最低の商い」とおっしゃっていました。

 

きもののガイド本なのにこのようなことを書きましたのは、女性男性問わず、お買いになったきものを観て「買うんじゃなかった。二度と観たくない」と苦々しい思いを持つ方が出ないように、また、良いものを適正な値段でお客様にお


届けしようと思っている、真面目でちゃんとしたきもの店が、閑古鳥が鳴くことがないようにと強く願っているからです。では、「ちゃんとしたきもの店」を見分ける方法があるのか? あります。やっと本題にたどり着きました。

 

簡単なポイントの1つは、店員の方がきものを着ているかどうか、です。考えてみれば当然のことです。欧米の高級ブランド店の店員は、全員そのブランドのお洋服と小物をまとっていますよね。それと同じことです。

 

ポイントその2は、お品物の過大な値引きセールをするかどうか、です。

これも結構大事です。1割くらいならまだしも、5割とか6割などのお値引きをするというのは、そのお品物の原価がよほど安いとしか考えられません。おおかた「中国製」なのでしょう。

そうでないならば、破綻寸前でなりふり構っていられないのかとも疑います。

その点、六本木にお店のある「awai」さんの方針は明確です。あそこは値引きをいたしませんが、それは、買った人、製品の作り手、製品を売る人、の三方が得をする値段を慎重に決めているからです。原価を考えると、適正な値段はこれしかない、そういう正しい商売をしないと、お客様からの信用を失い、見向きもされなくなると、理解しておられるのです。

 

ポイントその3は、店員さんがきもの、織物、自分の店のお品物についての知識をしっかりとお持ちかどうかを確認することでしょう。

たとえば、結城紬を売っている店が、「地機(じはた)」と「高機(たかはた)」(註3)の違いが分からないようでは問題があるでしょう。

昨今では、産地紬については、ネットでかなり詳しい情報を得ることができます。逆に言えば勉強するのは簡単ですので、そういう最低限の知識さえ持っていない店員さん、織物の製作工程を聞かれても、首を傾げるような店員さんを置いているお店は、ちょっとお客様をなめていると言われても仕方ないのではないかと。

 

良いお店を見分けるポイントは、ほぼこの3点につきます。つまり、買う側も本を読んだり、サイトを読んだりのお勉強がいるわけです。

手前味噌ですが、わたくしの小説も、きものについて言及しているものがござ

【その5:男性のきものは必ずブームがきます】

いますので、もしよろしければ、ご高覧下さいませ。(笑)

一番多く触れているのは「クオドリベット」でしょうか。男主人公が、江戸時代から続く老舗呉服店の社長です。彼が登場する場面では、大島紬にグレーの帯を締めて、翡翠色の羽織を着ております。一応、女主人公である社長夫人も、茜色の付け下げ(染のきものですね)を買い求めております。

<a href="http://forkn.jp/book/1206/"><img src="http://forkn.jp/book/1206/image/LbgdmCMO?thumb=100&t=1317471763" border="0" />
<br />クオドリベット 上巻</a><br />by 深良マユミ<br /><a href="http://forkn.jp">forkN</a>



P座標、原点」では、副主人公であるストリップ劇場の女性オーナー(いわゆる、やくざな世界の女)が、いつもきもの姿です。最初の場面では「ひょうたんを描いた帯」を締めてますが、次の登場場面では……



 

書こうと思いましたが、あまり嬉々として自分の作ったキャラクターの装いを語るのもみっともないので、やめておきます。

ともあれ、作中人物がまとうきものから、その人物の性格、世界観をかいま見て頂きたい、いつもそう願っております。

 

その5:男性のきものは必ずブームがきます

 

この章立てで拙文は最後になります。「男性のきもののブーム」は、景気さえ良くなれば、実現するだろうと確信しています。

昨今の、花火大会での、あのゆかたをお召しになった若い方の集団を見れば、ブームにならないほうが変です。あの方達が、ゆかたなら着るがちゃんとしたきものは着ない(買わない)のは、ただひたすら「お金がないから買えない」だけだと思うのです。

すなわち、日本全体の景気が回復すれば間違いなくきものをお求めになるでしょう。そして、きものに対する障壁が低いのは、着付けが簡単な男性です。

「楽天」を観ても、男性用のきもののお店がたくさんありますから、潜在的な需要は、相当大きいと思われます。

 

そういうわけですので、今、この拙文をお読みになっている男性の皆様には、ブームを先取りされるのもよろしいのではないかと。(笑)

 

縷々述べて参りましたが、きものは、衣服と言う意味では実用品ですが、この国の先人が愛おしんできた文化財でもあります。恐らく、それがわたくしが、
深良マユミ
作家:深良マユミ
今度、きものを着よう その2
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