戦国初級列伝 浅井長政・初・江~2011大河を見るとき知っておくと楽しい話~

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第1章-浅井長政-( 1 / 11 )

浅井長政(あざいながまさ)

姓は「あざい」と読みます。「あさい」と読んでしまうと「こいつわかってねえな」と見下される可能性がありますが、実は「あさい」が正しいとする説もあったりするので「お前こそわかってねえな」と逆に見下し返すことも可能です。憎しみと争いの連鎖とはこのことです。
浅井氏は藤原氏をその祖に持つと言われます。教科書で習った平安時代の、我が世が望月だったり平等院が鳳凰堂だったりする、あの藤原氏です。そう聞くとものすごく由緒正しい感じがするかもしれませんが、戦国武将のほとんどは「源氏」「平氏」「藤原氏」のいずれかを祖先に持つとされています。武田信玄さんは源氏、織田信長さんは平氏です。本当に持ってたりただの自称っぽかったり、それはいろいろなのですけれども、ともかく武士としてそういう由緒ある姓を持ってるとハクがつきますし、またたとえば源氏じゃないと征夷大将軍になれないなど、決まりもいろいろあったようですね。豊臣秀吉さんなどは平民出身であったため源氏も平氏もなんにも名乗りを持っておらず、幕府も開けねーし天下を治める大義名分なんもねーよー、となったため、わざわざ公家(近衛家)に養子に入ることでようやく貴族として関白の位について天下人の大義を得たりしたぐらい、武士にとって家柄は重要であったのです。
浅井家の家紋は「三つ盛亀甲に花菱」。某キッコーマンのロゴみたいな六角形の中に花の模様が描かれたものが「品」の字のように三つ重なった図柄です。これを覚えておくと、お醤油を見るたびに長政さんに想いを馳せることができます。(馳せなくてもよいです)

第1章-浅井長政-( 2 / 11 )

戦国好きは諱(いみな・浅井長政さんで言うところの「長政」)よりも官位で呼びたがったり通称で呼びたがったりするのでついでにそれも覚えておきましょう

受領名(官位と呼ばれるもののうち朝廷から賜ったわけではない「非公式」「自称」であるもの)は備前守。ですので「浅井備前守」といえば通常は長政さんのことを指します。近江(滋賀県)の大名なのになんで備前(岡山県)守を名乗るのか、そういえば秀吉さんも筑前(福岡県)守だったりするし、なんでみんなわざわざ縁もゆかりも無さそうな地名を使うのか、というと、これはいろいろ理由があるのですけれども、ややこしいので「そういうものだ」と認識しておく程度で構いません。弱いのにツヨシ君がいたり、グッドルッキングガイと見るや付いていくようなタイプなのにジュンコちゃんがいたりするようなものです。(違います)
通称は新九郎。幼名は猿夜叉丸といいました。一つ間違うと女子中学生と一緒に四魂のかけらを探す旅に出そうな変わった幼名ですが、浅井家代々受け継がれていた由緒ある名前なのだそうですよ。

第1章-浅井長政-( 3 / 11 )

不遇な中小企業として

当時の近江には、南の六角家、北の浅井家、という二つの有力な大名家がありました。もともと浅井家は京極家という大名家の配下だったのですが、京極家が家督争いで混乱している隙をついて、長政さんの祖父にあたる浅井亮政さんという人が独立、瞬く間に北近江に勢力を広げたのです。スーパーおじいちゃんです。
ところが、亮政さんの子で長政さんの父である久政さんの代になると南の六角家に押され、浅井家は六角家に人質を出し同盟することでその勢力を保つほか無くなってしまいます。長政さんもその人質の一人として、幼少期のほとんどを六角家で過ごしました。はじめ元服するときも、六角の当主・義賢さんから一文字貰って「賢政」と名乗ったぐらい、六角家には気を使っていたわけです。

しかし、六角家の家臣の娘さんと縁談が持ち上がり、さすがに長政さんも「これはまずい」と考えます。大名の娘ならばともかく、その家臣の娘を妻に迎えるということは、つまり浅井家が完全に六角家に臣従したと認めるに等しいこと。たとえて言えばライバル会社の社長令嬢ではなく専務あたりの娘と結婚するようなもので、そんなことになってはあれよあれよと吸収合併されてしまうのは目に見えています。頑張れ鉄工所。負けるな鉄工所。
ということで長政さんは六角家に擦り寄ろうとするお父さんを隠居させ、無理矢理結婚させられていた家臣の娘も離縁して返上し、自ら家督を継いで六角家と袂を分かつのですが、そもそも六角家に勝てないから同盟していたわけで、何も考えずそれを破棄したのではどのみち滅亡は免れません。どうする鉄工所。負けるな鉄工所。

第1章-浅井長政-( 4 / 11 )

転機・織田との同盟と婚姻

実際に六角家から攻められたりしていたのですが、それをどうにかしのいでいるうち、織田信長さんから同盟のお誘いがやってきます。当時の織田家は美濃(岐阜県)の攻略とその後の上洛(京の都へ上ること)を目標にしており、近江を通過するため六角との敵対が避けられない格好になっていました。敵の敵は味方です。しかも、万が一にも裏切られてはたまらないので、ただの同盟ではなく信長さんの妹・お市さんと長政さんとの婚姻付き。お市さんは絶世の美女と名高く、信長さんも「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」と考えていたのか、そんじょそこらの馬の骨と結婚させるわけにはいかないとばかりに行き遅れ寸前(といっても20歳ぐらいですが)まで温存していた、まさに虎の子の令嬢です。専務の娘さん返して良かったね鉄工所。負けるな鉄工所。
その後、脅威ではなくなった六角家を織田家と一緒に打倒、上洛し将軍・足利義昭さんを擁立するに至って一躍天下人の座に近付いた信長さんを義兄に持ち、長政さんの前途は洋々といった趣になります。ついさっきまで臣従か滅亡かの二択だったような状態なのに、宿敵はいなくなるわ美人の嫁は来るわ天下人の義弟になるわ、と突然すごい運の開けようです。雑誌の広告に載ってる幸運のペンダントを買ったのかもしれません。

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