友情をかけた嘘

ゆう子が東京に行くと聞いたときは、へこんだけど、ゆう子は、やっぱ、さすがと思った。根性、あると思った。俺ときたら、しょぼい、情けなかった。ゆう子にかっこいいとこ見せようと投げてきた俺に、けりを入れたみたいで、眼が覚めた。くよくよ、悩んでいたけど、甲子園のマウンドに立って、もっと、かっこいいとこを見せちゃる、と決心した。

 

恥ずかしくて、ゆう子の前では絶対言えんけん、メールで言うばい、ゆう子のこと大好きやったばい(^0^)そいじゃな*

 

ゆう子はこのメールで始めて気づいた。横山が嘘をついていたことを。今まで、ゆう子との約束を破ったこともなく、ゆう子に嘘をついたこともなかった横山が、約束を破り、嘘をついた。小学校のころから、正義を貫き通す裁判官になると胸を張って豪語していた横山が、自分を裏切り、嘘をついた。

 

もし、横山の嘘がなかったら、東京に羽ばたくことはなかったに違いない、とゆう子は思った。遠くに消えていく糸島を見つめるゆう子の瞳からは、感謝の涙があふれ出て、止まらなかった。

 

春日信彦
作家:春日信彦
友情をかけた嘘
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