3.娘が家出~
で~次の朝お父さんは朝起きまして、パンとコーヒーの朝食取りまして家後にしたんですが。でも何か、いつもと違った感じしとりまして。たら案の定、練習場に学校から電話ありまして、
「由美ちゃん今日は学校きてませんけど、どうかしましたか?」
って担任の先生から。
かくしてお父さんあわてちゃったのでありまして、その日はまるで仕事に身が入りません、だって娘の家出なんてお父さんとして初めての経験だったのですから。
で早々に帰宅しましたお父さん、弱り切っておりますところに妻の妹・加代さんから電話が。
「なんかあったんですかお兄さん?由美ちゃん私のとこに来てますよ」
って。
この加代さん現在東京で中学の教員しとりまして、とっくにアラサー世代なのに独身でして。でも妻が亡くなって以来、いつも娘のこと心配してくれます夏木父娘にはかけがいのない存在。
そんな人がおりましたから娘のこと心配しながらも、
「加代さんとこに行っててくれればいいんだけど」
なんて思っとりましたことは確か。
そう思っておりましたから、こちらから電話するって方法もなくはなかった。でもでも妻の両親まだ健在でしたから、娘の問題でこちらから電話って~のもはばかりまして。
でホッとしましたお父さん、あわてて加代さん、いや亡くなりました妻の実家に出かけてまいりますことに。
4.こんな娘に誰がした?
がしかしそこにはこれが我が娘かってほどの、いつもと違う娘に出会うことになってしまいました。それは妻の実家での出来事を再現してみますと、
この家の二階にあります、亡くなりました妻の部屋におりました娘。加代さんと一緒に
降りてまいりまして、父親を見るなり以下のようなことになりました。
「お父さんなんか、私のことなんとも思ってないじゃないか」
「私のことなんかちっとも心配していないじゃない、自分のことしか考えてないじゃないか」
と最初から強い口調で、父親に切り出したのです。
そして
「学校でどんなことがあったって、お父さんは私のために、他の親みたいに先生に相談しに学校きてくれることなんかなかったじゃないか」
さらに、
「由美はいつも一人ぼっちだった、そんな寂しさ忘れさせてくれるのが、ママに教えられたゴルフなんだ」
「パパがいない夜寂いしい時、ゴルフの練習してた」
「そうするといつも傍にママがいてくれるって思えたんだ」
「いつもママは私がゴルフ上手くなるのを、傍で見いてくれるように思えたんだ」
「だから由美はママに教わった通りに、一生懸命練習したんだ」
娘の勢いは止まりません、
「それなのにどう由美がゴルフすること、お父さんはいけないって言うの、どうして」
せきを切ったように、それはまるでまくしたてるように続く娘の言葉に、夏木さんはただただ茫然として身動きできないほどでした。
5.怖い娘の理由が
なぜ娘がそんなに怒っているのかの概略は判りました、でもその後の、
「娘が自分に隠れて続けていたゴルフって何なんだ?」
「何故娘が続けてきたゴルフってものを、自分が気が付かなかったんだ?」
そんなこんなを考えますと、謎は深まるばかりの夏木さん。
でも娘の続けられる言葉から、その後その真実を理解することになるのです。
「パパは私が学校でいじめにあってることなんか知らないでしょ」
「そんなパパいない夜でも、ゴルフの練習してれば寂しくない」
「だってママがいつも傍にいてくれてるって、我慢して練習してた」
娘の父親に対する説明?は続きました。
「それなのにパパはママが教えてくれたゴルフ、ママと由美のただ一つの思い出のゴルフすることに何故そんなに反対するのはわからない」
「パパは由美にママのこと忘れろっていうの。そんなこと、そんなこと私は絶対嫌だからね」。
娘からの父親への叱責?はさらに勢いを増しまして、
「加代叔母ちゃんだって、ママ死んだからってゴルフ投げだしちゃダメだよ」
って。
「倉田の叔父さんは上手くなれよって、いろいろ練習しやすいようにしてくれた」
「だけどパパは、いつも自分のことしか考えてなかったじゃないか」
「だからママは早く死んじゃったんだ~」
ってところまでまいりますと、娘は加代に顔を伏せるように泣きじゃくったのでございました。
その時の夏木さん、
「なんで加代さんが?、どうして倉田が~?」
って半ば放心状態。
娘を取り巻く真実を理解するまでには、まだまだ時間を要することは不可欠でありました。
6.ホントに我が娘なのか?
夏木お父さん、初体験の娘の反抗にまず驚かされました。だって今まで一度として、父親に口答えなどしたことないおとなしい?娘だったと思っていたのですから。
それがまあその今までのおとなしいイメージが一掃されちまうほど、この日の娘の激しい一面見せられた。これには驚かされると言うより、ショックってだったというのが正しいと感じましたものです。
深い意味があって、娘のゴルフを否定した訳ではありませんでした。ただ今の自分が苦しんでいる仕事、そのゴルフをやろうなんて娘の話に《中学生は中学生らしく》と言っただけ。そう諭しただけ、いや叱ってしまったと言った方が正しいのかもしれませんけど。
その父親の話に、娘は今までにないほどの反抗的態度をとった。それは夏木さんにとって、
「この娘のどこに、こんな激しさあったのだろう」
「なぜこれほどの態度を取るのだろう」
それがお父さんの偽らざる心境でした。
現在夏木父娘が住んでおります家の庭には、夏木さん用の練習ネットがあるにはあった。しかしそれを夏木さんが使わなくなってから、相当な時間が。
でその場を毎朝通り過ぎる折、誰かがって感じしないでもなかった。それってある時は妻が、して最近は娘が遊ぶ程度・・・??。でもそんなこと、たいして気にも留めることなく今まででした。
そう言われれば~な感じします夏木さんにとりまして、
「一体この娘にとってのゴルフとはなんなんだ?」
「妻・利江はこの娘にどんな事を教えたというんだ?」
ですからですからこの時の夏木さんには、訳わかんなくなってまして返す言葉もなかった状態に。
その上妻の妹がその後、娘がゴルフを続けることを促した。さらに、夏木の無二の親友倉田まで由美のゴルフを支え続けたと。この辺りまで理解できますと、もう頭の中が真っ白けになってしまっている自分が・・・。
そんな疑問符いっぱいの夏木さんに、泣きじゃくる由美に代わって加代が口を開きました。それは由美が亡き妻・利江に幼い頃からゴルフの手ほどきを受け、今やその実力は大人の領域に達しているということ。
まさに妻の妹・加代から知らされます娘のゴルフとは、娘のゴルフに付いて初めて聞かされる驚きの内容だったのでありました。