僕はそんな話をしていた。彼女は反応に困った顔をしていた。当然だ。こんな時にへんな夢の話をする奴なんてそう居ない。
「ええっと、おもしろかったですわ」
「いや、無理に笑わなくていいんだ。別にひっぱたいたたかれたって気にしないさ」
「いえ、なんだかその女の子、私みたいだなって」
「君が?そんな、夢に出てきたのは別の人だったよ」
彼女は少しうつむいて電報を見ていた。
「私、今までおっとさんが無事かどうか知りたくてずいぶん無理をしてきた気がするのです。毎日畑が終わると郵便屋の旦那に何か知らせはないか聞きに行ったり、親戚にも連絡がないか聞いたり、焦っていたのです」
「それは当然だよ。誰でも自分の親が帰ってこなければ心配になるさ」
「そうですけれど、今こうやって知らせが来ても信じられない自分がいるようなのです。汽車が進むのがずいぶんまどろっこしく感じてしまうのです。でも今焦っても仕方がないことですよね。今の私にできるのはこの電報を信じるだけです」
彼女はくしゃくしゃになった電報を懐の中に仕舞い込んだ。
「焦ってもおっとさんに会うまでにくたびれてしまいます。せっかくの綺麗な着物を台無しにしたくありませんしね」
彼女はほんの少しだけ笑った。
「失礼します」
横から声をかけられた。
「乗車券を拝見させていただきます」
「ああ、ちょっとまってくれ」
僕は懐から二枚の金色の羽根を取り出した。
そこで目が覚めた。