蝋人形の飾り窓

 戦時中旧満州に所在を置いていた細菌部隊、731部隊なる組織があった。

様々なウィルスを培養し、捕虜を実験道具に使った忌々しい過去が有る。

その時期にも人身売買が暗躍していた、独りの中国人女は13歳で売られ、性奴隷として歯を全

抜かれた、それから10年毎日のように弄ばれ病気になった、手と足が病で腐り切断を余儀な

くされる、その手足が無い身体がマニアに受けたらしく、尚も犯され続け30歳という若さで息絶え

た。

こんな光景が罷り通っていた時代を、繰り返し香港の闇組織は行っている。

 

 その後隔離された部屋で、綾は2週間クスリ漬にされ、性奴隷と化していた。

マインドコントロールされた綾は、クスリと男無しでは生きられない身体になってしまった。

一晩中綾の秘部にはバイブレーターが差し込まれ、快楽にのた打ち回っていた。

 監禁一ヶ月目の朝、鉄のドアが静に開いた、スーツを着込んだ冬樹が現れた。

「綾さん・・出発の時間だよ・・さあ、これを着てください・・・」

冬樹は薄いブルーのワンピースと、純白のセットの下着を差し出した。

綾は意識が朦朧としていて、冬樹を認識できない・・言われた通り、身支度を整える。

そこへ、一人の見知らぬ女がやってきた。

「さあ、そこに座って・・メイクするわよ・・・」

女は綾にメイクを施し髪の毛もセットした、着飾り化粧をした綾は普通の女に見える。

「さあ、出かけましょう」

冬樹は綾の手を取り、長い廊下を歩いた。

 

 最早常人ではない綾は吐き気で目が覚める、床が揺れている。

そこは船倉であった、香港へ向かう闇ルートの船舶で綾は手錠を嵌められていた。

(ここは?・・ワタシは何をしているの・・・死にたい・・・)

身体が震える苦しい、クスリの禁断症状である、するとガチャっという音が聞こえた。

「そろそろ欲しい時間かな・・」

冬樹であった、注射器を持っている。

綾はそれを見た途端、足を開き悶え始め涎を垂らし、冬樹を誘う。

「いい子だね・・いまアゲルからね」

冬樹は綾の注射痕で痣だらけの腕にクスリを打つ、途端に綾はブルブル震え自己陶酔の世界に

浸っていった。

 

 

 香港レトロチャイナの裏通り、レンガを積み上げた質素な建物がある、外見は倉庫風である

が、中には地下へと通ずる階段がある、階下には門番らしき屈強な白人が二人立っていた。

建物の前には時折高級車が停まり、富裕層らしき外国人達が地下へと消えてゆく。

その中は、シックなアンティークの椅子が羅列され、正面にガラス張りの部屋がある。

 

 深夜港に横付けされた密航船から、着飾った様々な国籍の女達が十数人連なって降りてき

た、女達は手錠を掛けられ、無表情のまま迎えのバスに乗っていく、バスの側面には遊覧車、つ

まり観光バスと書いてあった。

女達は、重厚なカーテンが閉められた個室に入れられ、各々胸に番号札を付けられた。

綾は胸に9番札を付けられ、椅子に座るよう命じられる、両隣の女は肌色が浅黒く東南アジア系

人種であろうか、占めて15人が横列に並んで座っている、どの女も美形でそれはまるでミスグ

ランプリの審査のような雰囲気であった。

 

 ガラス張りの部屋の前の椅子には、アラブ系や白人多人種の、財を築き上げた名士が並んで

いる、するとブザーが鳴り響き、物陰から出てきた黒いスーツの男が挨拶を始めた。

「お集まりの皆様・・これよりオークションを始めさせて頂きます・・・さてここでの初値は・・・・・・・

10000香港ドルからスタートになります、ご承知の通り私共の商品はクオリティーが高く、教育

は最高水準であり、生命ある限り皆様に尽くします・・・ただ一つご注意点を申し上げますと・・・

ドラックだけは常時与えてください・・商品の寿命はこれ如何によりますので、くれぐれもご注意の

程お願い致します・・尚、商品の返品交換は致しかねますので・・・それではカーテンオープン!」

ガラス張りの重厚なカーテンが開いた、女達の無表情は続いている。

「それでは番号札1番、国籍はフィリピン、年齢は22歳、名前はジョシー、さあ、服を脱ぎなさい」

女は衣服をゆっくり脱ぎ下着も外した、観客から歓声があがる。

「さぁ、皆様・・10000から・・」

方々から値段の吊り上げ始まる、フィリピンの女は16000香港ドルで、アラブ系の男が落札した

、オークションは続き、綾の番が回ってきた。

「さあ、皆様・・人気の日本人です・・年齢は25歳、名前はアヤ、服を脱いで・・・」

綾は着ている物を全部脱ぎ、全裸を晒した。

 

 

 

「有難うございます・・25000で落札です、末永く可愛がってくださいますようお願い致します」

綾は日本円で約2600万円で落札された、買ったのは中国富裕層の宋福寿という不動産王であ

た、宋という男は中国の資産家のトップ5に名を連ねる大富豪で、今回も自家用ジェットで秘密

裏に来ていた、地位も名誉も手に入れた宋は常人の道楽では満足できない、闇組織からオファ

ーがあり興味本位で参加した。

「宋様・・今回はいい買い物をなさいました・・・」

「そうかね・・ドラックはどれ位の頻度で・・・」

「そうですねぇ・・あまり与え過ぎると寿命が持ちませんので、一日一回程度で宜しいかと・・・」

  

 宋の邸宅は中国上海にあり、別荘やマンションを数件所有している、その中で宋個人がプライ

ートを過ごすのは高層マンションのペントハウスで、週末は執事と専用コックだけで過ごしてい

る、綾はその一室に入れられた、その部屋は天蓋突きのダブルベット、トイレ、シャワールーム

が完備されおり、絨毯はペルシャの高級な物が敷かれている。

「この部屋は24時間室温25度に設定されている・・さあ服を脱ぎなさい・・オマエはこれから一

生裸で過ごすのだよ・・」

綾は言われるまま裸になり、差し出された犬用の首輪を付けた。

 宋は今年58歳になるが、糖尿病も重なりEDであった。

「アヤ・・俺は病気で息子が言う事を聞かんのだ・・さあその口で元気にしておくれ・・・」

「はい・・・その前にクスリを・・・・・」

「おう、そうか・・忘れていたよ・・」

宋は執事に電話をし、例の物を持ってくるよう指示した。

「さあ、これが欲しいのか、うん?ほら・・・・」

綾は涎を垂らしながら股間に手を伸ばし自慰行為を始めた、目は虚ろとなり小さく喘いだ。

宋は、綾にクスリを注射した。

「あっ・・・あああぁ・・・・」

「おお、可愛いのぉ・・・早くその口で元気にしてくれ・・・」

綾は狂ったように宋の一物に舌を這わしながら咥え始めた。

それは延々3時間に及び、一向に宋の一物は隆起しなかった。

「この下手くそが・・・ベットに寝ろ・・・足を開け・・・」

宋は綾の秘部に極太のバイブレーターを挿入し、掻き回すように責め立てた。

「ああ・・・ああああぁ・・・・」

綾は絶頂に達した。 

 あれから3年綾は性の奴隷として過ごしたが、クスリの影響で既に身体はボロボロであった。

身体は痩せこけ、食物も受け付けず水分のみの摂取では仕方が無い。

歩く事も儘ならない綾を宋は、格安で知人の金登春に譲り渡す事にした。

「こんな骨が透けるようなガリガリか・・・役に立つのか、宋さん?」

「金さん、まだまだアソコの方は元気だよ・・ただ上の口は歯を全部抜いた方がいいな、シャブら

ると歯が当たる・・・」

 

 綾は廃人になっていた、思考能力などない、栄養分の点滴を打たれ、クスリを打たれ、ただ反

するのは秘部だけで、異物を挿入されるとそこは微かに潤う。

売られた金にも愛想をつかれ、場末の売春宿に転売されてしまったのだ。

 その売春宿でも客など付くはずも無く、とうとう路上に捨てられることになった。

辛うじて粗末な衣服を着ているものの、その容貌は浮浪者のようで正に廃人である、若干27歳

若き女の姿は微塵も無い。

 上海の裏ドヤ街で物乞いしている所を、教会の牧師が助けてくれた。

今では寝たきりの綾は、教会の屋根裏部屋に横たわっていた、そこには飾り窓がある。

その窓から望む空をただ見つめている日が暫く続いた。

ある朝、その窓から差し込む朝陽が綾の顔を照らしている、それは生気のない蝋人形のような

窪んだ目から、一滴の涙が落ちた。

(ワタシの人生・・何だったんだろう・・・)

飾り窓に止まる一羽の雀が綾の気持ちを代弁しているようであった。

綾は目を開けたまま、息をしなくなった。

 

エンジェル
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