蝋人形の飾り窓

 綾は思い切って声を掛けてみる決心をした。

「あのぉ・・失礼ですけど・・・もしかして・・メールくれた方ですか?」

「えっ、あっ・・そうです・・いや、こんな綺麗な人だとは思いませんでした」

「そんな・・・」

近くで見ると、爽やかで綾の理想のタイプであり、来て良かったと本気で思った。

「あっ、はじめまして・・僕・・内藤冬樹といいます・・」

「ワタシは、中野綾といいます・・」

「中野さんは、お酒は飲めますか?」

「はい・・少しなら・・」

「よかったぁ、近くに行き付けのバーがあるんで、宜しければ御一緒に・・・」

「はい・・・」

 いきなりお酒か・・でもお酒が少し入った方が話し易いかな・・ホント素敵な人だな・・背も高い

し、優しそう。

綾は、内藤の後を歩き新宿歌舞伎町へ向かっている、かなり裏通りを進んでいる、大丈夫だろう

か・・・すると鄙びたビルの地下へ降りた、ドアには会員制とある・・中に入って少し驚いた。

そこはシックなモノトーンで統一された、大人の空間が拡がっていた。

カウンター席しかないが、初老のバーテンダーがシェイカーを振っている、奥の席にはお洒落な

一組の男女が座っていた。

「綾さん・・でしたっけ?何飲まれます?」

「あっ、じゃあマティーニを・・・」

「マスター、マティーニと僕はドライシェリーを」

「かしこまりました」

手際よく作る初老のマスターは、蝶ネクタイの似合う素敵な紳士だ。

内藤は、シェリーを一口飲んだ後、徐に綾に振り向き爽やかな笑顔で喋り出した。

「綾さん・・今日は来てくれて、本当に有難う・・凄く嬉しいです・・」

綾は内藤の目を見た途端、吸い込まれそうな程惹かれて行った。

「いえ・・こちらこそ・・」

「出会い系サイトでこんな素敵な人に出会えるなんて・・・」

「内藤さんは、貿易関係のお仕事なさってるんですよね?」

「はい・・・あっ、冬樹でいいですよ」

綾は、緊張からかマティーニを飲み干した、以前飲んだことがあるが、少し変わった味がする・・

高級な店は違うのかな・・。

「お強いですね・・もう一杯如何ですか?」

「はい・・」

二杯目を飲み終えた頃、綾はダルさというより眠気を感じた、おかしいなこの位で酔うなんて・・・

「冬樹さん・・スイマセン・・少し酔ったみたいで・・・・」

 

 

 四方がコンクリートで固められ、出入り口のドアは鉄製の古びた物で錆びている。

その部屋には裸電球の灯りだけで中は至極暗い、生活音もなにも聞こえない、牢獄より酷い場

である。

 蒸し暑さと激しい頭痛で綾は目が覚める、身動きできない事に気付き両手を後ろでに縛られて

るらしい、しかも下着姿であった、自分の置かれている現実を疑い、夢を見ているのか錯覚

を覚える。

(何・・ここは何処?痛い・・頭が割れそう・・・どういうこと?確か夕べ・・冬樹さんと飲んでいた・・・)

「誰か!助けて・・・出してよ・・・誰か」

綾の叫び声が虚しく響く。

 どれ位の時間が経ったのだろう喉が渇き尿意をもようしてきた、我慢できず羞恥心も忘れ、綾

尿を垂れ流した、涙が溢れ激しく首を振る。

「助けてよ・・誰か・・・」

すると、コツンコツンと足音が近づいてくる、鍵を開ける音が聞こえた。

薄明かりで影のようだが男だ。

「ねえ、どういうこと?出してよ、何なの、ねえ・・聞こえないの?」

男は何も答えず、トレーに乗せたペットボトルの水とコンビニ弁当を地面に置いた。

そしていきなり綾を抱きお越し、後ろ手のロープを解き始める。

「ねえ、何なの・・出してよ、助けて・・お願い・・」

すると、男は綾の下着を強引に剥ぎ取る。

「キャー・・ヤメテ・・お願い・・・ヤメテよ・・」

男は何も言わずドアに鍵を掛け、足早に去っていった。

(何なの・・ああ・・助けて・・誰が・・・)

綾は自由になった両手で髪の毛を掻き毟る、コンクリートの地面は硬く露出する肌が痛い。

 時間の感覚がない、暫し眠っていたようだ、身体が痛い。

ペットボトルの水を一気に煽った、空腹に負け冷たい弁当に手をつけるが、嘔吐した。

汚物と垂れ流した尿の臭気でまた嘔吐を繰り返す、綾は平静を保てる自信は既にない。

 

 あれから何日経ったのだろう、数時間ごとに同じ男が同じ水と弁当を運んでくる。

すると、今度は白衣を着た男が入ってきた、綾は動く力も気力も残っていない。

白衣の男は綾の腕を取り何やら注射器の針を刺した、意識が飛んでいき綾は倒れた。

 

 

 

 

 コンクリートの部屋は異様な臭気を放ち澱んでいた、綾の心は壊れかけている最早ギリギリの

態である。

そのとき鉄製のドアが開いた、暗がりで見えにくいが見覚えがある。

(えっ・・・・・・冬樹さん?・・・何で・・・どういうこと?)

「そろそろ準備しようか・・出発は近いよ・・・」

「何・・・どういうことなの・・冬樹さんよね?何なの・・出してよ・・・助けてよ・・・お願い・・・」

「君には悪いが、選ばれちゃったんだよね、クライアントに」

「はあ?馬鹿じゃないの・・意味分かんない・・いいから出して・・・」

「さあ、別室を用意してるから、行こうか」

するといつもの男が綾を物凄い力で抱え上げる、憔悴しきっている綾には抵抗すらできない。

長い廊下を抜け突き当たりの部屋に入った、そこは大きな円形のベットがあり、奥にはガラス張

のバスルームがある、ソファーとテーブルもありそのテーブルの上には、鞭のようなものと、性

玩具のような如何わしいものが並べて置いてあった。

「さあ、風呂で身体をキレイに洗って、食事も用意するよ」

綾は反論する気さえ失っていた、だが風呂にはどうしても入りたかった、何日も汗と汚物にまみ

れ女としてのプライドだけは捨てられなかったのだ。

 

 移動させられた部屋にも窓はなく、出入り口のドアは施錠されている、綾が風呂に入っている間

、テーブルにはステーキとサラダ、ライスにスープが並んでいた。

綾は貪欲にむしゃぶりつき、残らず平らげた。

暫くしてドアが開く、ボンテージに身を包んだ金髪の女と素っ裸の筋骨隆々の黒人が入ってきた。

「さあ、お勉強の始まりよ」

「何・・何するの・・・お願い・・ここから出して・・・」

「無駄よ・・アナタは一生奴隷となるの・・二度と自由になれないの・・クライアントに可愛がれるた

めにはあらゆるテクニックを身に着けないとね」

「奴隷?・・・・ふざけないでよ・・ここは日本よ・・馬鹿言わないで・・さあ、出してよ」

「おりこうさんにしてないと、罰を与えるわよ、ふふふ・・・」

金髪の女は片手に鞭を持ち、徐に裸の綾の尻に打ち放った。

「ギャーっ・・・」

綾の尻はミミズ腫れができ、出血した。

「ヤメテ・・お願い・・ヤメテ・・・」

「だから言ったでしょ・・さあ授業を始めるわよ・・」

「さあ、腕を出して・・早く出しなさい」

綾は恐怖で震えながら右手を差し出した、女は注射器を取り出し、得体の知れぬ液体を注入し

た、女は躊躇なく綾の腕の静脈に注射した。

「あううう・・・ヤメテ・・・ああ・・・」

綾は全身の力が抜けて腰がぬけ、床に倒れた。

鼓動が早くなり目が回る。

「いい感じじゃない・・さあこっちへおいで・・・」

ベットへ連れて行かれると、既に黒人が仰向けに寝ていた、それを見た綾は驚愕する。

今迄男を知らないわけではない、しかしこんなに凄いものを見たことがない、それは裸の黒人の

間に隆起する30cmはあろう一物だった。

「さあ、奉仕するのよ・・丁寧に・・」

「いやあぁ・・・・・ぎゃっ」

女は綾の尻に鞭を放つ。

「早くしな・・舌を使って丁寧に・・・」

すると黒人は綾の乳房を鷲掴みにし、いきなり秘部の奥に指を入れ、ゆっくりと動かし始めた。

クスリのせいだろうか、気持ちとは裏腹に気持ちが高揚してくる、身体の内側から快感の波が押

し寄せて、綾は喘ぎ出した。

「そうそう・・さあ今度はアンタが奉仕する番よ・・」

「ああぁぁ・・・」

綾は黒人の一物を咥えた、涎を垂らしながら性技に陶酔していく。

(ああ・・壊れていく・・ワタシ・・・壊れる・・・)

「いいわね・・そうよ・・・さあ・・足を拡げなさい・・」

綾は仰向けになり足を開いた、すると黒人は固く隆起した一物を綾の秘部へ一気にぶち込む。

「ぎゃあぁ・・・裂ける・・・痛い・・・・うっ・・ああああぁぁ・・・」

徐々に快感に変わってゆく・・綾は味わった事のない快感で何度も何度も絶頂を覚えた。

「最高でしょ?これから毎日男を喜ばせるテクニックを勉強してもらうわ・・・」

 

 中国に返還されてからの香港は、経済も上昇し活気に溢れている、その裏で暗躍する闇の組

織も新たなビジネスルートを模索し賭博や売春、人身売買を行っていた。

富裕層をターゲットに性奴隷として送られてくる各国の女を売買する組織は、日本にも手が伸び

ていた、特に日本人の女は人気があり、売買価格も上昇している。

 

 

 

エンジェル
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