蜻蛉の接吻

 「美紀・・・・ゴメンよ・・一人にさせちまって・・美紀・・・・・」

物陰に隠れていた義人会の日村が、ドスを片手にそっと近づいてくる。

「おんどりゃぁぁ・・死ねやぁ」

ドシンッという衝撃が走った、脇腹に日村のドスが突き刺さる、目の前が真っ白になった。

そこへ5台の車が突っ込んできた、拳銃の発射音が工場内に響き渡る、雄二の放った弾丸が日

村の頭に着弾し頭半分が吹き飛んだ。

意識が朦朧としてきたが流星は、美紀を抱き上げ唇に接吻した。

雄二たちは流星の元へ駆け寄る。

「おい、しっかりしろ流星・・待ってろって言ったろう・・馬鹿野郎・・・いま医者連れてってやるから

な・・死ぬんじゃねえぞ・・」

流星は出血が酷く薄れ行く意識の中で囁いた。

「兄貴・・・・俺・・美紀と一緒にいるよ・・・・・コツコツと・・・アスファルト・・・に・・響く・・・・・・・」

流星は消え入るような小さな声で、好きだったトンボを唄いながら静に眠りについた。

 破れたシャツの間から、血に染まった唐獅子の彫物が見える、静まり返った廃工場に雄二の

雄たけびが木霊する。

遥か遠くで救急車のサイレンが聞こえる。

流星と美紀の手を握らせ、着ていた上着をそっと掛けながら、雄二はゆっくりと歩き出した。

 

エンジェル
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