夜空に願い事を・・・ (Make a wish in the night sky ...)

  若い頃は、血の気が多かったせいか、血筋か、毎日 喧嘩をしているようなもんだった。
  飲んで喧嘩をした時に
「酔っ払って、殴り殺した時は、ごめんなっ!?・・・」
「お前に殺されるなら本望だっ!?・・・」
 これこそが《売り言葉に買い言葉》だった。 

  そういう記憶しか残ってなかった。
  冷静になっては、俺が悪いのか、親父の考え方が悪いのか、どこの家も毎日!?といえる程 ぶつかっているのか、うちだけなのか迷った!?ものだった・・・・・・。
  迷宮に迷い込み、趣味にアルコールに薬!?に逃避して寝て忘れてストレスをリセットしていく。

  寝る事、起きる事の下手な俺は、早めにとこに入るがうとうと~としたり、何度も寝返りをしたり、トイレに行ったりして、朝方 眠たくなる、また昼に風呂に入ると午後二時頃に眠くなり、二・三時間位 寝入ってしまう事や早めに寝る事が多い。

  また風呂に入ると一日・二日位 体が温まって、これまた良く眠れない、自分の体なのに上手くいう事をきかないものだ。
  後から聞いた話だけど、親父もそうらしい、やはり同じ血の繋がった物同士か!? 参ったものだ。

 仕事から帰ると親父は、前に視線を向けボ~としていた。
  何か気に食わないような感じで見ていて無表情でふてぶてしいといった感じに見てとれた。
  いつも出てくる言葉は、薬からか食べる物が、
「美味くな~い・・・!?」とか、
「あ~あっ、ヤ~ンなっちゃった」
「どうして、こんな事に成っちゃったんだろうな~・・・人生って何なんだろうな~!?」
というのが口癖だった。

  母親も聞き飽きた感があり、たま~に遠ざけていた。
  入れ歯にしたせいか、抗がん剤のせいか、ワガママからか、母親に食べる物が、マズイと当たったり、夢の中に亡くなった爺さんや婆さんが出て来たと、直ぐに水枕が欲しくなり、作らせたり、氷が足りないとスーパーに取りに行かせたりと使ってばかりいた為からだった。

「今日は、起きていて元気だったかんか・・・・・・!? 飯、いっぱい食べたか・・・・・・!?」
と俺は、親父に言った。
「・・・・・・んっ、いっぱいご飯  食べた・・・・・・」
と少し間をおいて返事が返って来た。
  ブ~ブブ~ッ、また少しおいて親父が屁をしった。
「元気いいんじゃん!?」
  親父が少しこちらを向いて
「元気ないっ・・・元気あるのは、おならだけだ」
  だって言っていた。

  『世界の果てイッテQ』のイモト  マッターホルン登頂の映像を見てあまりの凄さに感動し、涙が溢れ出ないもののマブタ内に溜まり、遊泳していたのが分かった。
  感動し~の涙もろく、ティッシュペーパーを多用する俺だった。
  親父は、爺さんが亡くなった時でさえ、涙を流した事が無い人だったのに。

  親父は、余命を医者に言われ気が弱くなり、頭で整理出来なくなり、食欲が無くなり、動く事をしなくなった人だった。
  それでも母親は、愛しているのか、献身的に面倒を見ていた。
   そして「頼りにしているんだからね」と親父に言って聞かせていた。

  薬で体が弱ってきているのか、度々 風邪薬を飲んでは、寝ていた。
  昔は、よくタバコを吸ったり、アルコールを馬鹿飲みしたりして、
「死ぬー、死ぬ~」と言っていた人だった。
  夕食時で風邪薬を飲んで二階で寝ている親父を見に行った母親が降りて来て俺に言った。
「死んでいるみたいに良く寝ているわ」だって・・・・・・。
「良く眠れる事は、いい事さ」
「ただ、昼間  寝ると良く五月蝿いんだよね」だって。
  仕方がないさ、外は、全国的に台風が来ていて荒れているからね。

  入院当日  親父は、嫌がっていた。
「ヤダナ~、やっだな~」
  病院に近付くにつれ、言葉が出なくなっていた。
  車内が静かになっていく。
  車を駐車した。
「はいっ、着いたよっ」
  圧倒される程の大きな病院がそびえ立っていた。
  恐る恐る病院内に歩を進めて行く。

  担当の先生いわく、三週間の検査入院という事だった。
  病院に親父をおいてくると寂しいのか、生活になれていないのか、午後六時頃  毎日  電話がかかってきた。
  必要な物だったり、心配事ややはり、寂しくらしいという母親の言葉だった。
  度々  病院に足を運ぶようになる。

  地震などが心配で度々  連絡してきた  昔 マッポにお世話になった奴が親父を心配して返って来た。
  墓参りに行って膝を付き、手を合わせて泣いていた。
「・・・・・・御免よ、悪い事をして迷惑をかけて・・・・・・」
  反射的に左を向いた。
「・・・確かに昔は、悪い事をしたけど、今、真面目にやっていれば、いいんじゃないか、これから先が大事なんじゃないかな・・・」

  そんな奴が親父に会いに病院に行った。
  お互いに久しぶりだったが、話は、バカ話ばかりをして笑い声が漏れる程  砕けていて楽しかった。
  看護婦さんからの連絡で目の前に緊急のヘリが降りた。
  患者さんを緊急輸送するという事だった。
  見るのが初めての事だった。
  飛び立って行くまで見ていた。
「オスプレー!?」
「違うよ、リモコンのヘリ!?」
  二人で手真似をする。
  病院内の憩い室で久しぶりにバカ話をして家族団らんをして盛り上がった。

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
夜空に願い事を・・・ (Make a wish in the night sky ...)
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