貧乏な人にならないための基礎知識 ~社畜人生を振り返って~

 

   しかし、もしそうではないなら…。

   本心から会社を愛し、家族と同等以上の存在であり、自分の人生に欠かせない大切な組織

   ではない、というのなら。

    それでも残留すべきかどうか、しかし残留する人はきっとこういう理由だと思います。

    「そんな目に遭ってまで転職しても、実際世の中は不景気だしきっと失敗するだろう」

   「転職したいが、次はどんな人間関係の職場かもわからない、怖いから現状維持でいい」

   「家族に何て言われるか。これまで得てきた価値観が崩されるのはいやだ、このままでいい」

   「せっかく築いた人生が壊されてたまるか、きっとそのうち業績も上向くはずだから我慢だ」

   「転職は履歴書にキズがつく。せっかく生え抜きでここまで来たのだからイヤでも居なければ」

 

   これらの考え方もまた、今や「昭和後期の名残り」でしかないのです。 

   ですがこれは、今後自分自身にムチを打つ危険な生き方です。ほぼ精神支障をきたします。

   現在の就業人口で3割以上の「うつ」など潜在疾患者がいるのは、これを選ぶからです。

   確かに、大手企業や昭和時代からの伝統のある経営を続けている企業なら、今でも高学歴

   で転職回数の少ない人で、できるだけ若く、できるだけ多才で、できるだけ前職に長く勤務

   している人から採っていくのが世の常です。

   特に、今まで長く勤務していて初めて転職をするしかない事になった方は、職歴が長ければ

   長いほど、また家族を持っていればいるほど「転職」ということに強いジレンマと抵抗感を覚え

   てしまうのは間違いないと思います。

 

   実際よその企業へ移るという決断は、特別なスキルを持っていない限りほとんどの場合が 

   失敗に終わってしまうケースが多いのも事実です。

   決断した転職が「こんなはずでは」となり、しばらく我慢してみたがまた転職を繰り返し、遂に

   全然続かない人に自分がなってしまう…

   これがまた、現実によくある話なのです。

 

   企業もその事を知っているので、転職回数が多い人はなるべく採用を控えた方がいい、と

   いう暗黙のルールが敷かれているのです。

   悲惨なのは、そんな事も知る機会がなく、ただ自分の実績と仕事の経験だけで転職して

   しまい、「しまった、こんなはずでは」となってしまうことです。

   

   ですが、いまのご時勢ですから、今後はほぼどの企業に転職しても「しまった」になる確率

   だけが高くなるはずですし、

   本当に「良い企業」は、本当に優れた人材を、ほんのわずかな人数しか中途採用する枠

   はない、というのも実際現実です。

   まして、「年齢」の問題で年収以上の転職を可能にするには、相当に困難な条件がつき

   まとうのは明白です。

 

   だからこそ、どうにか現職にしがみ付きたい。という事になるわけですからね。

   

   でも、どうしようもないのです。希望年収で、希望の年齢での採用枠は現実にないのです

   から。

   ないものをいくらねだってみても、現実どうしようもありません。

   

   2011年度は、自殺者が中高年を含めてついに4万人を突破したそうですが、こうやって

   現実に求人に応募しても不採用続きになったり、転職が叶っても入社したとたんに募集時

   の就労条件がまったく違った、実は詐欺同然の会社だったりと、

   転職したはいいけれど「筋金入りのブラック企業的中でした」というケースもまた全然珍しく

   はありません。

 

   こういった今の労働環境こそが、ついこの前まで普通の暮らしをしていた平凡なサラリーマン

   が、ある日を境にワーキングプアの仲間入りをしていく事になったり、また労働時間を果て

   しない長時間勤務に晒すような超過酷なサービス残業に追いやったりしていくからです。

   儲かる事を主体に考えた企業目線で言えば、「あなたの代わりはいくらでもいる」のです。

 

   これで、精神状態が鬱になったり、家族との揉め事も絶えなくなったり、生きていくだけで

   「これは死んだほうがラクではないか」と考えてしまうような労働環境がますます量産され

   ていくことになります。

   いまのこの日本の現状を、「勝ち組・負け組」と呼ぶならば、教育されたとおりに真面目に

   勤勉に企業の正社員となって生きていくことが、高い確率で負け組へ近づく第一歩の道

   とは言えませんか?

 

   たんにそれは「確率の問題」でもあるかも知れませんが、

   あなたが志を高くして、自分の意思で、自分の熱い理念と希望に従って入社した会社が

   いったん傾けば、こういう立場に立つ可能性は「いつ何時でも」起こりえるのです。

   もちろん会社員でも今後も、一生をそこで安泰に暮らせて、大したトラブルもなく、多少

   賞与が低くなっても生活に影響のない範囲でクリアして円満退職する人も当然います。

   ただ「人生設計を狂わせるような、退職するしか方法がない重大な事案」が起こるか、

   起こらないかなんて、それを予測する事なんか個人レベルでは絶対に無理な話です。

 

   私は予想しますが、このままのペースで平成不況が日本に続けば、大企業のリストラの

   煽りを受けた中小零細企業も連鎖倒産したり、さらなるリストラを敢行していき日本中の

   労働者はさらに過酷な環境におかれて、労働者や自営業者の自殺件数はもうすぐに

   5万人規模を簡単に突破するだろうと考えています。

 

   かつての日本がそうだったからと言って、

   今の日本でもそうだという考え方を改められない「昭和中後期」の教育人種が一番その

   被害を受ける事になる確率は相当に高いと思います。

   私が冒頭部分でお話した、

 

   「独身で維持費がなく、そして時間をあり余って持っている若者が羨ましい」 というのは、

 

   私のように起きてる時間のほとんどを労働に費やし、無理難題な仕事でも自分で解決して、

   業務のために必要なことは日曜だろうが祭日だろうが関係なしに現場へ出て問題の処理

   にあたらなければならない、というのが「正社員としての勤め人のあるべき姿の標準」に

   なっている事を身をもって体験し理解しているからこそ、なのです。

   そこまでやるから、維持費並みの収入は「なんとか」今でも補えています。

 

   逆にそこまでしなければ、昭和時代に教えられ、この平成時代になって築いてしまった

   負債の支出維持費がまかなえないから、嫌でも頑張るしかないのです。

   私が、負債を返済し続けるためには、その負債を超える収入を常に確保し続けなければ

   ならず、そのためには初めから給与の高い仕事を選ぶしかないのです。 

   すべては「維持」のためだけに選んだ仕事だから、です。

 

   だから本心は、「好きな仕事」でも「人生を賭けたい仕事」でもないのです。

   単なる生活手段のためだけに、以前景気のまだ良かった時代からこの仕事に就いて、

   それを引きずっているだけだ、というわけなのです。

 

   「自分でそんな会社を選ぶからだ」

   批判はごもっともです。きっとあなたは若い方でしょう。

黎明堂
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