貧乏な人にならないための基礎知識 ~社畜人生を振り返って~

 

   入社以来真面目に仕事を覚えて、会社に従って、会社のために尽くして来て家庭を築けた

   これまでの人生を振り返ると、会社が経営不振になったというだけで、従業員という立場

   の者は、どちらに転んでも奈落の底に突き落とされるような仕打ちを選択するしかない事

   になってしまいます。

   …でも、もう喚いても足掻いてもどうしようもありません。

   ここで、テコでも会社にしがみつくというのなら、次に待っているのはボーナスももう頂け

   ない年収大幅ダウン+サービス残業の嵐という正念場か、

   または心機一転、新たな雇い主を探し求める新たな人生の旅か、ということになります。

 

   しかし、

   人間十年以上も同じ生活と、徐々にステップアップしてきた人生生活環境を突然に一転

   させる事などそう簡単で生易しいことではありません。

   「真面目に一筋にやってきたのに」と愚痴をこぼすしか方法がないというわけですよね。

   さあ…

   ここが実は、サラリーマンという職業よりも、「人間力」が相当試される分岐点となります。

   減収されようが左遷されようが最低最悪な部所へ異動になろうが、またどんなに過酷な

   サービス残業を与えられてもものともしない不屈の精神力でもって、組織の人として生き

   抜くという、これまでの会社の恩義に従って人生を一途に貫くのか、

   あるいはこれを転機と考え、世の中、経済の流れを冷静に判断してドライに割り切って

   自分が正しいと思う新たな人生を踏み出すのか。

 

   この答えに正解はありません。 どうしても大好きな、自分の一生を捧げるべき仕事だと

   思い、どんな苦難にも立ち向かう決意と理念があるならば会社と共に苦楽を共にすべき

   ですし、また大好きな仕事に縁をいただいた会社に残留することが誇りでもありプライドを

   持てる、それはそれで立派な生き方と人生戦略だ、と私ははっきり断言します。

 

   しかし、もしそうではないなら…。

   本心から会社を愛し、家族と同等以上の存在であり、自分の人生に欠かせない大切な組織

   ではない、というのなら。

    それでも残留すべきかどうか、しかし残留する人はきっとこういう理由だと思います。

    「そんな目に遭ってまで転職しても、実際世の中は不景気だしきっと失敗するだろう」

   「転職したいが、次はどんな人間関係の職場かもわからない、怖いから現状維持でいい」

   「家族に何て言われるか。これまで得てきた価値観が崩されるのはいやだ、このままでいい」

   「せっかく築いた人生が壊されてたまるか、きっとそのうち業績も上向くはずだから我慢だ」

   「転職は履歴書にキズがつく。せっかく生え抜きでここまで来たのだからイヤでも居なければ」

 

   これらの考え方もまた、今や「昭和後期の名残り」でしかないのです。 

   ですがこれは、今後自分自身にムチを打つ危険な生き方です。ほぼ精神支障をきたします。

   現在の就業人口で3割以上の「うつ」など潜在疾患者がいるのは、これを選ぶからです。

   確かに、大手企業や昭和時代からの伝統のある経営を続けている企業なら、今でも高学歴

   で転職回数の少ない人で、できるだけ若く、できるだけ多才で、できるだけ前職に長く勤務

   している人から採っていくのが世の常です。

   特に、今まで長く勤務していて初めて転職をするしかない事になった方は、職歴が長ければ

   長いほど、また家族を持っていればいるほど「転職」ということに強いジレンマと抵抗感を覚え

   てしまうのは間違いないと思います。

 

   実際よその企業へ移るという決断は、特別なスキルを持っていない限りほとんどの場合が 

   失敗に終わってしまうケースが多いのも事実です。

   決断した転職が「こんなはずでは」となり、しばらく我慢してみたがまた転職を繰り返し、遂に

   全然続かない人に自分がなってしまう…

   これがまた、現実によくある話なのです。

 

   企業もその事を知っているので、転職回数が多い人はなるべく採用を控えた方がいい、と

   いう暗黙のルールが敷かれているのです。

   悲惨なのは、そんな事も知る機会がなく、ただ自分の実績と仕事の経験だけで転職して

   しまい、「しまった、こんなはずでは」となってしまうことです。

   

   ですが、いまのご時勢ですから、今後はほぼどの企業に転職しても「しまった」になる確率

   だけが高くなるはずですし、

   本当に「良い企業」は、本当に優れた人材を、ほんのわずかな人数しか中途採用する枠

   はない、というのも実際現実です。

   まして、「年齢」の問題で年収以上の転職を可能にするには、相当に困難な条件がつき

   まとうのは明白です。

 

   だからこそ、どうにか現職にしがみ付きたい。という事になるわけですからね。

   

   でも、どうしようもないのです。希望年収で、希望の年齢での採用枠は現実にないのです

   から。

   ないものをいくらねだってみても、現実どうしようもありません。

   

   2011年度は、自殺者が中高年を含めてついに4万人を突破したそうですが、こうやって

   現実に求人に応募しても不採用続きになったり、転職が叶っても入社したとたんに募集時

   の就労条件がまったく違った、実は詐欺同然の会社だったりと、

   転職したはいいけれど「筋金入りのブラック企業的中でした」というケースもまた全然珍しく

   はありません。

 

   こういった今の労働環境こそが、ついこの前まで普通の暮らしをしていた平凡なサラリーマン

   が、ある日を境にワーキングプアの仲間入りをしていく事になったり、また労働時間を果て

   しない長時間勤務に晒すような超過酷なサービス残業に追いやったりしていくからです。

   儲かる事を主体に考えた企業目線で言えば、「あなたの代わりはいくらでもいる」のです。

 

   これで、精神状態が鬱になったり、家族との揉め事も絶えなくなったり、生きていくだけで

   「これは死んだほうがラクではないか」と考えてしまうような労働環境がますます量産され

   ていくことになります。

   いまのこの日本の現状を、「勝ち組・負け組」と呼ぶならば、教育されたとおりに真面目に

   勤勉に企業の正社員となって生きていくことが、高い確率で負け組へ近づく第一歩の道

   とは言えませんか?

 

   たんにそれは「確率の問題」でもあるかも知れませんが、

   あなたが志を高くして、自分の意思で、自分の熱い理念と希望に従って入社した会社が

   いったん傾けば、こういう立場に立つ可能性は「いつ何時でも」起こりえるのです。

   もちろん会社員でも今後も、一生をそこで安泰に暮らせて、大したトラブルもなく、多少

   賞与が低くなっても生活に影響のない範囲でクリアして円満退職する人も当然います。

   ただ「人生設計を狂わせるような、退職するしか方法がない重大な事案」が起こるか、

   起こらないかなんて、それを予測する事なんか個人レベルでは絶対に無理な話です。

 

   私は予想しますが、このままのペースで平成不況が日本に続けば、大企業のリストラの

   煽りを受けた中小零細企業も連鎖倒産したり、さらなるリストラを敢行していき日本中の

   労働者はさらに過酷な環境におかれて、労働者や自営業者の自殺件数はもうすぐに

   5万人規模を簡単に突破するだろうと考えています。

黎明堂
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