貧乏な人にならないための基礎知識 ~社畜人生を振り返って~

 

   他人事なら冷静に客観的に考えられますが、

   いざ自分がその立場に立たされていて、現実に来月の支払いが給料振込み口からガンガン

   毎月引き落とされる姿を見慣れている、いつもの我が家の普段の光景であれば、リアルに

   冷や汗しか出てこないのではないでしょうか?

   時間と共に、残高が、ゆっくりと、しかも確実に、容赦なく減少していきます。

   こうなると、今までほとんど気にしていなかった「支払い額」自体が増えているような錯覚

   を覚えるような精神状態になってしまうわけです。

   

   旦那さんであれば、ほとんどの多数派はこう思います。

   「うっわ、ボーナス減っちゃってる、ってか手当てなんか少なくなってね?やばいもっと残業

   する方法がないかな…」 

   奥さんであれば、ほとんどの多数派はこう思います。

   「ちょっとこれってマジ?来月隣の奥さんとプチ旅行する約束したのに…クルマも家も養育費

   もすべて大事な予算だから、そうだ旦那の小遣いをもっともっと減らさなきゃやばいわ」

 

   こうやって、幸福で何の変哲もなかった家庭は、徐々にいがみ合うようになり小さな摩擦が

   頻繁に起こることになっていくのです。

   そこへ、会社からある日突然の通達がなされます。

 

   「早期退職希望者募集、早期退職者には2割増しの退職賞与を支給」「今後残業の禁止」

   そして最後は肩叩き…。

   さあいよいよ決断の時です。

   嘆願して意地でも社員として保留する代わりに、まったく経験のない部署へ異動されたり、

   あるいは子会社へ出向などの名目で補充されたり好きなように扱われても従うか、

   または潔く早期退職を果たして転職の道を選ぶかということになります。

 

   入社以来真面目に仕事を覚えて、会社に従って、会社のために尽くして来て家庭を築けた

   これまでの人生を振り返ると、会社が経営不振になったというだけで、従業員という立場

   の者は、どちらに転んでも奈落の底に突き落とされるような仕打ちを選択するしかない事

   になってしまいます。

   …でも、もう喚いても足掻いてもどうしようもありません。

   ここで、テコでも会社にしがみつくというのなら、次に待っているのはボーナスももう頂け

   ない年収大幅ダウン+サービス残業の嵐という正念場か、

   または心機一転、新たな雇い主を探し求める新たな人生の旅か、ということになります。

 

   しかし、

   人間十年以上も同じ生活と、徐々にステップアップしてきた人生生活環境を突然に一転

   させる事などそう簡単で生易しいことではありません。

   「真面目に一筋にやってきたのに」と愚痴をこぼすしか方法がないというわけですよね。

   さあ…

   ここが実は、サラリーマンという職業よりも、「人間力」が相当試される分岐点となります。

   減収されようが左遷されようが最低最悪な部所へ異動になろうが、またどんなに過酷な

   サービス残業を与えられてもものともしない不屈の精神力でもって、組織の人として生き

   抜くという、これまでの会社の恩義に従って人生を一途に貫くのか、

   あるいはこれを転機と考え、世の中、経済の流れを冷静に判断してドライに割り切って

   自分が正しいと思う新たな人生を踏み出すのか。

 

   この答えに正解はありません。 どうしても大好きな、自分の一生を捧げるべき仕事だと

   思い、どんな苦難にも立ち向かう決意と理念があるならば会社と共に苦楽を共にすべき

   ですし、また大好きな仕事に縁をいただいた会社に残留することが誇りでもありプライドを

   持てる、それはそれで立派な生き方と人生戦略だ、と私ははっきり断言します。

 

   しかし、もしそうではないなら…。

   本心から会社を愛し、家族と同等以上の存在であり、自分の人生に欠かせない大切な組織

   ではない、というのなら。

    それでも残留すべきかどうか、しかし残留する人はきっとこういう理由だと思います。

    「そんな目に遭ってまで転職しても、実際世の中は不景気だしきっと失敗するだろう」

   「転職したいが、次はどんな人間関係の職場かもわからない、怖いから現状維持でいい」

   「家族に何て言われるか。これまで得てきた価値観が崩されるのはいやだ、このままでいい」

   「せっかく築いた人生が壊されてたまるか、きっとそのうち業績も上向くはずだから我慢だ」

   「転職は履歴書にキズがつく。せっかく生え抜きでここまで来たのだからイヤでも居なければ」

 

   これらの考え方もまた、今や「昭和後期の名残り」でしかないのです。 

   ですがこれは、今後自分自身にムチを打つ危険な生き方です。ほぼ精神支障をきたします。

   現在の就業人口で3割以上の「うつ」など潜在疾患者がいるのは、これを選ぶからです。

   確かに、大手企業や昭和時代からの伝統のある経営を続けている企業なら、今でも高学歴

   で転職回数の少ない人で、できるだけ若く、できるだけ多才で、できるだけ前職に長く勤務

   している人から採っていくのが世の常です。

   特に、今まで長く勤務していて初めて転職をするしかない事になった方は、職歴が長ければ

   長いほど、また家族を持っていればいるほど「転職」ということに強いジレンマと抵抗感を覚え

   てしまうのは間違いないと思います。

 

   実際よその企業へ移るという決断は、特別なスキルを持っていない限りほとんどの場合が 

   失敗に終わってしまうケースが多いのも事実です。

   決断した転職が「こんなはずでは」となり、しばらく我慢してみたがまた転職を繰り返し、遂に

   全然続かない人に自分がなってしまう…

   これがまた、現実によくある話なのです。

 

   企業もその事を知っているので、転職回数が多い人はなるべく採用を控えた方がいい、と

   いう暗黙のルールが敷かれているのです。

   悲惨なのは、そんな事も知る機会がなく、ただ自分の実績と仕事の経験だけで転職して

   しまい、「しまった、こんなはずでは」となってしまうことです。

   

   ですが、いまのご時勢ですから、今後はほぼどの企業に転職しても「しまった」になる確率

   だけが高くなるはずですし、

   本当に「良い企業」は、本当に優れた人材を、ほんのわずかな人数しか中途採用する枠

   はない、というのも実際現実です。

   まして、「年齢」の問題で年収以上の転職を可能にするには、相当に困難な条件がつき

   まとうのは明白です。

 

   だからこそ、どうにか現職にしがみ付きたい。という事になるわけですからね。

   

   でも、どうしようもないのです。希望年収で、希望の年齢での採用枠は現実にないのです

   から。

   ないものをいくらねだってみても、現実どうしようもありません。

   

   2011年度は、自殺者が中高年を含めてついに4万人を突破したそうですが、こうやって

   現実に求人に応募しても不採用続きになったり、転職が叶っても入社したとたんに募集時

   の就労条件がまったく違った、実は詐欺同然の会社だったりと、

   転職したはいいけれど「筋金入りのブラック企業的中でした」というケースもまた全然珍しく

   はありません。

黎明堂
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