【ISIS Selection 07】ロスト・ウェアハウス・テープの謎

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はじめに( 1 / 1 )

はじめに

　今月はボブ・ディランのニュー・アルバム『Tempest』の話題でもちきりですが、少し前にリリースされたブートレッグ『Nashville Sessions 1969 And More』（Rattle Snake RS250）に収録された音源に関する記事を紹介します。このブートレッグは中身が1969〜70年のカントリー期のレコーディングなので、あまり大きな騒ぎにはなりませんでしたが、1995年にその存在が明らかになったウェアハウス・テープを収録したものということで特筆に値します。

『Nashville Sessions 1969 And More』

01 Lay Lady Lay
02 One More Night
(Nashville Skyline sessions, Columbia Studio A, Nashville, Tennessee, February 13th, 1969)

03 Blue Moon 1
04 Blue Moon 2
05Ring Of Fire
06 Take A Message To Mary
(Self Portrait sessions, Columbia Studio A, Nashville, Tennessee, May 3rd, 1969)

07 Living The Blues
08 Take Me As I Am
09 Let It Be Me
10 I Forgot More Than You’ll Ever Know
11 Take A Message To Mary
12 Blue Moon
13 Folsom Prison Blues
14 Ring Of Fire
(Acetate source recorded at Columbia Studio A, Nashville, Tennessee during the Self Portrait recording sessions between April 24th and May 3rd, 1969)

15 eBay Sample
16 CNN News Report

17 Went To See The Gypsy
18 If Not For You 1
(Columbia Recording Studios, New York City, NY, dates unknown)

19 Sign On The Window
20 If Not For You 2
21 I Threw It All Away
22 Honey Just Allow Me One More Chance
23 Working On A Guru
(Columbia Studio B, New York City, NY, May 1st, 1970 New Morning Sessions with George Harrison)

24 Tomorrow Is A Long Time
(Studio E, Columbia Recording Studios, New York City, NY, June 4th, 1970)

　詳しいことは本文に書いてあるのですが、ウェアハウス・テープの大まかなことはこうです：

1960年代後半〜70年代にナッシュヴィル・スタジオのレコーディング・エンジニアだった人物が、スタジオから廃棄処分されるべきテープを捨てずにため込んでいた。
1990年に倉庫代が払えなかったことからテープは競売にかけられて別の人の所有物となり、さらに1995年に怪しい業界人がこれを購入し、大々的に発表したことからテープの存在は広く知られることになった。
ソニー（コロムビア）は所有権を主張して裁判を起こしたが、テープそのものの所有権に関しては敗訴。
21世紀に入ると、このテープに関する噂はあまり流れなくなったが、突然、2008年にeBayに出品され、誰かが3万ドルで落札。
2012年に少なくとも一部がブートレッグ化。

　話はボブ・ディランだけでは終わりません。2004年にアメリカの怪しい業者が、エルヴィス・プレスリーの〈That's All Right〉のマスターテープを2インチ長に切ったものを額に入れたメモラビリアを販売して話題になりましたが、筆者のデレク・バーカーは、これは本当のマスターテープではなく、ウェアハウス・テープの中にあったものではないかと類推しています。膨大な量のウェアハウス・テープの中にはボブ・ディランだけでなく、ルイ・アームストロング、ジョニー・キャッシュ、ビル・ヘイリー、バディー・ホリー、ジェリー・リー・ルイス、ロイ・オービソン、エルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラ等の音源も含まれているらしいのですが、ボブやエルヴィスのテープの出現の仕方からすると、業者が資金を回収するために密かにバラ売りされているのでしょうか？今後のニュースにも要注意ですね。

2012年9月
加藤正人

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: ロックンロール叢書
作家:デレク・バーカー

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