「え?」
なに。
今。
耳に。
「わざとだよ」
ほよよんとした顔で理史は舌を出すと、「ありがとね」なんて言ってシャーペンをかかげて教室から出て行った。
残されたのは私。
耳に手を置く。
理史が「わざと」唇で触れたそこに。
家もクラスも隣の、弟みたいな理史。
でも、もうそんなこと言ってられないってこと。
もう、二人共知っている。
(了)
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