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夢を見た。
夢の中には大きな桜の樹があった。
その桜の樹の下。あの子が居た。
「翼っ」
私は名前を呼ぶ。
翼は振り返らない。
あの日以来、行方不明になってしまった幼なじみ。
どうして私は、受け入れてあげられなかったんだろう。大事な幼なじみだったのに。
私の声は翼には届かないようだ。何度名前を呼んでも、近づいても、翼は振り返らない。
どこからか、不思議な格好をした女の子が現れる。
「レポーロ」
翼は彼女を見て、幸せそうに微笑んだ。
彼女は翼の手をとって、どこかへと歩いていってしまう。
待って行かないで。
追いかけようとして、目が覚めた。
翼はもう帰って来ないのだろうか。そう思った。
耳元で誰かが囁いた。
「翼はもう、私のものだよ」