「あのさ・・・」
背中越しだと、普段より素直な言葉が口に出せそうな気がしてきた。
「ん?」リュウが少し首をかしげてこちらを見ている。
シャンプーの香りが伝わってきて、
余計あたしの心臓はドクドクと高まりを増した。
「あのさ、この間、図書館で髪の長い女の子と仲良さそうにしていたでしょ?」
「だからいっただろ!ただの塾の友達だって」
「あたし、見ちゃったんだもん。リュウが、その・・・、その女の子から抱きつかれているところ」
「・・・」
リュウがだまった。
「え・・・何とか言ってよ!」
今度はあたしが不安になる。
どうしてだまっているの?本当にあたしの思い描いていた最悪のシナリオ通りなの?
あたしは、もしかしたらリュウは他の女の子と付き合っているかもしれないと思いはじめていた。
だって、リュウは背も高いし、頭もいいし、しかも顔だって悪くない。
そんなリュウがあたし一人のものでいられるわけがないもの。
あたしは、一番じゃなくて二番でもなくて、三番目くらいの女のかなあって、
勝手に想像してはここのところずっと落ち込んでいたのだ。
「あのさあ、おまえ、俺のことそんなにうたがってるわけ?」
「うたがってるって・・・そんな、うたがいたくはないけどさ・・・。
あたし、何のとりえもないし料理だって出来ないし、足も遅いし・・・。
いつも周りから人気のあるリュウがあたしだけのものじゃないっていつも感じていた。
信じられないくらい幸せだった。
でも、あの日、リュウが他の知らない女の子といるところをみて、
なんか、やっぱりなっていうか、仕方がないのかもって、諦めがつくっていうか・・・」
だんだん自分が情けなくて、あたしは必至で涙をこらえた。