星と私と君の距離

二宮先輩が観測をしているところに行くと京香はいなくなっていて先輩は一人だった。

勇気をだして声を掛ける。

「二宮先輩、今望遠鏡で何を見てるんですか?」

「あっ柏木。ちょうど良かった。これ、この前柏木が好きだって言ってたアンドロメダ銀河が見られるよ。」

「嬉しい。見ていいですか。」

二宮先輩の隣で、望遠鏡を覗きこむ。とてもと無数の遠い距離にある星々の集団がほのかな光を地球にいる私たちにも届けてくれる。

しばらく無言で二人で頭上の満点の星空を見ていた。

この幸せ私が思いを伝えたら壊れてしまうのかな。

でも、先輩に誤解されたままなのは絶対に嫌だ。

なにより膨らみ続ける気持ちをこのまま抱えこんでいることはできない。

 

「藤本君じゃなくて、私が好きなのは二宮先輩なんです」

と思いきって声に出す。

先輩はびっくりしたような困ったような表情をしてから、何も言わずに望遠鏡を覗きレンズの向いている位置を変え始めた。

え~ん。もしかして無視?自分の言ってしまったことに後悔していると先輩が

「これ、見てごらん。はくちょう座のくちばしにあるアルビレオ。この星は肉眼では一つの星に見えるんだけど実際は遠く離れた二つの星が互いの引力で引き合って廻っている連星なんだ。」

よく分からないまま望遠鏡を覗く。丸いレンズの中には先輩のいうように二つの宝石のように輝く青と金色の星がならんで仲良く寄り添っているように見える。

これが、わたしの突然の告白に対する不器用な先輩の答えなんだ。

ついさっきまでがさがさだったこころが一気に満たされる。

果てしない夜空にちりばめられた果てしない数の星。

先輩の気持ちははっきり言って良く分からないがそれでいい。

目を閉じると私の心に満点の星がふりそそぎ、遠いと思っていた私と先輩の関係は手を伸ばして背中に触れることはできなくても背中合わせの距離にあることを知る。

 

ゆず
作家:中原ゆず
星と私と君の距離
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