少女ふたり(嘘)


外に出ると、夏の太陽が眩しい。
 
涼しそうなワンピース姿の柚希と違って、アタシは制服だ。
これから学校で頭の悪いアタシは補修がある。
学校まで送ってくれるというので、二人で学校までの道を歩く途中、ちゃらそうな二人組の男に声をかけられた。
 
「ねぇねぇ、今暇?」
 身体に絡み付くような視線。
値踏みするような、無遠慮な目つき。
表面だけの笑顔。
 
「今急いでるから」
アタシがそう言って立ち去ろうとしても、前に立ちふさがられてしまう。

「いいじゃん、いいじゃん」
 アタシが声を荒げようとしたとき、柚希がアタシの肩を引き寄せて、前に出た。

「邪魔」
と、それだけ言って男を睨み付ける。
さっきまでの柚希とは正反対と言ってもいい態度。
まさかワンピースが似合う可愛い柚希から、そんな言葉が発せられると予想していなかったのか、アタシだけじゃなく男達も一瞬たじろいだ。
 
そんな男を一瞥して、柚希はアタシの手を引いて、その場を早足で抜けていく。
 
二人でしばらく、無言で早足で歩く。
アタシはひっぱられるがままだ。後姿しか見えないので、柚希が今どんな表情をしているのかはわからない。
 
でも、きっとたぶん、辛そうな顔をしていると思う。
さっきの相手が自分と同じ、男だから。
アタシは、何か声をかけなければと思えば思うほど、何を話せばいいかわからなくなってくる。
ただ、だまってるのも癪だったので、アタシは柚希の手を強く握った。
一瞬立ち止まる柚希。でも、またそのまま歩いていく。
アタシの手をさっきより強く握って……。
 
柚希の表情は見えない。
でも、たぶん、今は笑っているような気がする。きっと……。
 
アタシは空を見上げた。
夏の太陽は眩しく、アタシ達を照らす。
しおにゃん
作家:しおにゃん
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