うさぎとテニス部の呪い

 サキの教えてくれた呪いの解き方はシンプルで難しいものだった。

「誰かの事を本気で好きになればいいさ」

 まともな恋愛をしたことのなかった和真にはこれ以上難しい問題はなかった。

「他の方法って言ってもねえ、要は負の感情を打ち消すほどのまっすぐな想いがあれば解けるんだよ。大丈夫、片思いでも成立するから誰かかわいい子の事を好きになってみて」

 過去の先輩たちの中に片思いをしたことがある人はいなかったのだろうか。

「ノートに書かれている文章をみる限り、皆和真さんみたいに歪んだ思いをノートにぶつけていたから、そんなまっすぐな感情を持てなかったんじゃないかな」

 こうして和真は恋愛に真剣に向き合うことになった。サキは誰をターゲットにするか聞きたがったが相手は教えなかったらしい。

「そういえばちゃんと報酬貰わないとさ」

 和真が人間界に戻る前にサキが切り出した。どんな要求をされるのか和真は内心焦っていた。

「報酬はこのノート、もらっとくね」

 そもそもなぜサキが和真の前にあらわれたのか、それはサキが人間界の怪異を集めているからだそうだ。

「使った手鏡ももともとは人間の生み出した怪異さ。おもしろくて使えるからね」

 ノートを眺めながら笑っていた。

「それじゃあね」

「ありがとうございました」

 別れの挨拶はシンプルだった。

「あのっ」

 それでも

「また会ってもらえますか?」

 和真の想いは

「気が向いたらね」

 サキに届いたと思う

maruma
作家:丸中丸
うさぎとテニス部の呪い
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