なたの気持ちを全く考えていませんでした……本当に、ごめんなさい」
「いや、イナバさんは何も悪くないです。どっちかって言えば、そこのミモリが一番悪いような気が……」
「ちょっ! タオルはもう返したじゃないですか! 」
俺の視線を受けて、道の先で待っているミモリが驚いたような顔をする。
「イナバさまも! こんな人間の為に心を痛める必要なんてこれっぽっちだってないんですよ?」
「ミモリ、それじゃダメなのよ」
イナバがミモリを見て言葉を続ける。
俺の手を握るイナバの力が、少し強くなったような気がした。
「人間は、私たちと違って生きる事が出来る時間がとても短いの。それ故に、妖怪と人間の常識は大きく食い違っているところがあるわ。私たちが当たり前だと思っている事も、人間たちには理解出来ないことかもしれない」
ミモリは、じれったそうに地面を何度も踏んだ。
「時間ギリギリなんですよ? イナバさまの御力を信じられないだなんて、この人間はなんて食わせ物なんでしょうかねぇ」
イナバは俺に向き直って、赤い目で見てきた。
「人間のやりかたで、あなたを無事に帰すと約束がしたいです。どうすればいいですか?」
本当に、どこまでも真っ直ぐな目だった。
「……じゃあ、指切りでもしませんか」
俺は、開いてる手の小指を立てて、イナバの前に示してみせた。